俳句(12/18掲載)

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【石母田星人 選】


大根引く地球の果に足かけて   石巻市小船越/三浦ときわ

【評】引き抜く大根の手応えが思いの外強かった。「地球の果」という大袈裟な表現でもまだ足りない。その力強さの向こうには収穫の喜びが待っていた。


月代の蘆原に張る鴨の陣   石巻市相野谷/山崎正子

【評】月が昇る前の白んでゆく空を背景に、影絵のようになる鴨の群れ。争わず睦まず、決して崩れない円陣。やがて作者も輪の中に入る。実相観入の趣。


己が影踏めば音する寒さかな   石巻市吉野町/伊藤春夫

【評】上五中七は歩行状態を指すのだろうが、やや抽象的。だが感覚の季語「寒さ」に結び付けたことで音が鮮明化した。季語が句の曖昧性を取り払った。


なめらかな水面をゆらす鴨の陣   仙台市青葉区/狩野好子

気嵐や今朝も揚がらぬ大漁旗   石巻市門脇/佐々木一夫

北斗星見上げ漁せし冬の海   石巻市駅前北通り/津田調作

木枯しや川の流れに逆うて   東松島市矢本/雫石昭一

無機質になりゆく庭に黄の小菊   石巻市蛇田/石の森市朗

青空の腕(かひな)の中の冬紅葉   石巻市丸井戸/水上孝子

秋深しガリ版刷の案内図   石巻市小船越/芳賀正利

あれこれと軒に吊るして冬籠   石巻市中里/佐藤いさを

わが郷は稜線低し冬夕焼   石巻市広渕/鹿野勝幸

新蕎麦ののれんに並ぶ旅三日   石巻市桃生町/西條弘子

曖昧な記憶のところ冬の虹   石巻市中里/川下光子

家並みの濃霧の上に星一つ   石巻市流留/大槻洋子

鍬だこも消えて皺くちゃ懐手   石巻市蛇田/高橋牛歩

冬滝や妻との会話辿々し   石巻市新館/高橋豊

青黒く岩魚うごきて冬近し   多賀城市八幡/佐藤久嘉

陽を溜めて鉛色までの吊し柿   東松島市矢本/菅原れい子

さもなきを一喜一涙夕紅葉   石巻市開北/星ゆき

山茶花のつぼみは数多おんぶひも   石巻市二子/北條孝子

クリスマス点灯式の声ひびき   東松島市あおい/大江和子

冬座敷母の介護はうす明かり   石巻市流留/和泉すみ子

通い猫どこが塒の小夜時雨   石巻市元倉/小山英智

生き甲斐となりし句を詠み小夜時雨   石巻市渡波町/小林照子