コラム:「天賦の才」 ギフト

 贈り物の季節がやって来ました。この時期になると、短編小説の名手オー・ヘンリー( O.Henry、1862-1910)の代表作「賢者の贈り物」( The Gift of the Magi )が想い起こされるのです。

 新約聖書にはキリストの誕生を祝うため東方から三人の賢者( magi 《メイジャイ》と発音。単数は magus 《メイグス》)が贈り物( gift )を携えてやってきたと記されています。この話を下敷きに、若い夫婦の贈り物をめぐる行き違いを描いた心温まる一編です。副読本として英語の授業で読んだという方が多いのではないでしょうか。

 gift は「ギフト」として日本語に定着していますが、辞書をめくると次のような記述があります。1.贈り物、寄贈品 2.天賦の才、資質(新英和大辞典 研究社)

 「天賦の才」は天から授かった才能のこと。人間の資質は天、すなわち神から与えられるという考え方です。

 天や神から与えられたということから、gift は give と深い関係にあることは容易に想像できます。 give の名詞形と言えるかもしれません。

 「プレゼント」(英語: present )との関係はどうか。親しい人にお祝いに何かをあげるとき「これ、私からのギフトです」とは言わないでしょう。「私からのプレゼント」の方が普通ですね。このように、「プレゼント」は親しみの表れとしての贈り物を意味する語であるのに対して「ギフト」は多少ともあらたまった高級感といった感じを伴うようです。

 The Gift of the Magi の magi が何のことか分からなかった学生の自分が限りなく懐かしい今日この頃です。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)