俳句(1/22掲載)

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【石母田星人 選】


初競の手打の声に魚跳る   東松島市あおい/大江和子

【評】魚市場の初競の景。たくさんの買い受け人の声が飛び交う。臨場感のある「手打の声に魚跳る」の表現には、豊漁を願う気持ちも込められている。


冬木みな意中の星のありにけり   石巻市相野谷/山崎正子

【評】冬枯れの木立。その全てにひそかに思う星があるという。裸木は物さびしいがあれは春を待つ姿。内面は次の季節へと燃えている。恋のひとつもする。


山に入る新雪踏めば罪に似て   東松島市あおい/下山慶子

【評】山に入り新雪にぎゅっぎゅっと足跡を残す。絵を描くようで楽しいが、汚れのないものを壊してもいるのだ。日常のさりげない思いもこうして詩になる。


初社折り目正しき人の列   石巻市丸井戸/水上孝子

綾取りの橋を渡ってお正月   石巻市吉野町/伊藤春夫

カラフルな未来をここに初日記   石巻市開北/星ゆき

卓袱台にぽつんとひとつ寒卵   東松島市矢本/雫石昭一

ねむたうてひそひそ話嫁が君   石巻市中里/川下光子

読み初めの小口をなぞる荒れた指   石巻市流留/大槻洋子

強北風や渡船遅るるアナウンス   石巻市中里/佐藤いさを

初雀ふたり住まひの家の屋根   石巻市小船越/芳賀正利

颯爽と行き交ふカート年用意   石巻市蛇田/石の森市朗

白鳥の祈る姿に啄める   石巻市小船越/三浦ときわ

渾身の指揮者のさばきクリスマス   仙台市青葉区/狩野好子

年取ればことさら丸く大掃除   石巻市広渕/鹿野勝幸

冬怒濤防潮堤の大壁画   石巻市渡波町/小林照子

終電の過ぎしレールに霜しみる   多賀城市八幡/佐藤久嘉

冬満月幡男の遺書の口伝へ   石巻市桃生町/西條弘子

降る雪の頬かむりしてやぶ椿   東松島市矢本/菅原れい子

三陸の殻付海鞘の雑煮かな   石巻市蛇田/高橋牛歩

冬麗宮戸八景ウオーキング   東松島市矢本/奥田和衛

老僧や今年限りの除夜の鐘   石巻市新館/高橋豊

凍雲に陽ざしわずかにとどきけり   石巻市流留/和泉すみ子

初富士やランナーは今勝負処   石巻市中里/上野空

松の内孫が手を引く日帰り湯   東松島市矢本/菅原京子