俳句(1/8掲載)

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【石母田星人 選】


雪は地に大地は雪に埋れゐる   石巻市小船越/芳賀正利

【評】広大な地面に雪が降り積もる景。独自性ある表現は強いインパクトを持つ。対象にそそぐ優しさがあり、雪と大地の静かな会話が聞こえてくるようだ。


初春や被災の浜の波静か   東松島市矢本/雫石昭一

【評】被災した浜で初春の波を見つめている作者。心情は吐露していない。だが「被災の浜の波」と景を語るだけで、読む者それぞれに強く訴えかけている。


菊日和まなこ澄みたる牛帰る   石巻市蛇田/石の森市朗

【評】牧場から戻ってきた牛。のんびりと過ごした牛はこれから出産の日を迎えるのだろう。菊の香染み通る日和が、穏やかなまなこの牛を包み込んでいる。


北国に生まれ星座を識らず老い   多賀城市八幡/佐藤久嘉

山巓を讃えるごとく冬銀河   石巻市流留/大槻洋子

日の箔の囲んでゐたる牡蠣筏   石巻市相野谷/山崎正子

じやんけんのかけ声響く冬夕焼   仙台市青葉区/狩野好子

田も畑も仕舞うてけふの懐手   石巻市桃生町/西條弘子

霜月や衣桁にかかる鮫小紋   石巻市中里/川下光子

猫車ひと夜の雪に埋れをり   石巻市吉野町/伊藤春夫

冬満月李白大人降臨す   石巻市中里/上野空

木枯や復興住宅駆け廻る   石巻市元倉/小山英智

梟の声の乱るるレスキュー車   石巻市中里/佐藤いさを

コロナ禍と戦乱続く去年今年   石巻市広渕/鹿野勝幸

幕降りて湧く人波や月氷る   石巻市丸井戸/水上孝子

ゆく秋や時空重なる地層見ゆ   石巻市駅前北通り/小野正雄

侘び寂びを語る大樹の落葉ふむ   東松島市矢本/菅原れい子

深夜までテレビ応援湯ざめかな   石巻市門脇/佐々木一夫

冬麗や梁吊り上ぐるクレーン車   石巻市新館/高橋豊

凍て庭をゆらし雀らパンの山   石巻市開北/星ゆき

年新た大国主の白うさぎ   石巻市蛇田/高橋牛歩

老の身に夢よ再び帰り花   石巻市中里/鈴木きえ

夕時雨虹を残して暮れ行けり   石巻市駅前北通り/津田調作

アスファルト雪に馴染まぬ轍かな   石巻市二子/北條孝子

雪も積み夜明けに貨車の到着す   石巻市駅前北通り/工藤久之