俳句(2/19掲載)

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【石母田星人 選】


天井の声撥ね返す寒稽古   石巻市吉野町/伊藤春夫

【評】寒さに耐えての武道の鍛錬。室内だって寒いことは寒い。天井があることで掛け声がひびく。声の主は子どもたち。真剣なまなざしがはっきり見える。


立春のシュンが耀(かがよ)ふ磨りガラス   石巻市開北/星ゆき

【評】春を「はる」と読むと優しくのんびりとした印象だが、「シュン」は響きが新鮮でその訪れを強く感じることができる。磨りガラスの存在が詩を生んだ。


円ぴ持ち天地返しや寒の土   石巻市蛇田/高橋牛歩

【評】円匙(ぴ)とは小型シャベル。それで寒の土がひっくり返される。手入れの行き届いた畑なのだろう。「天地返しや」は目覚めた畑の土との対話のようだ。


沖よりの風のことづて辛夷の芽   石巻市相野谷/山崎正子

この土地に生まれ無口に雪を掻く   多賀城市八幡/佐藤久嘉

白鳥の花咲くやうに大田んぼ   石巻市広渕/鹿野勝幸

昨夜の霜大地を宙に押しあぐる   石巻市小船越/芳賀正利

躊躇(ためら)ひの一歩の沈む昨夜の雪   石巻市丸井戸/水上孝子

出羽を向く石碑の丸し山始   仙台市青葉区/狩野好子

編棒の目数等分冬銀河   石巻市中里/川下光子

常夜灯風花いよよ奔放す   石巻市中里/佐藤いさを

これからは補聴器が友春をまつ   石巻市流留/大槻洋子

春風やガンダム戦士ならぶ窓   石巻市蛇田/石の森市朗

ボール蹴る子らの足音あをきふむ   東松島市矢本/雫石昭一

初窯や入るる器の背比べ   石巻市新館/高橋豊

冬銀河急速回転静かなり   石巻市駅前北通り/小野正雄

春立つや納屋の農機具朝日さす   東松島市あおい/大江和子

置き去りの恋の記憶や冬木立   東松島市矢本/菅原京子

御先祖に暫し合掌受験の子   石巻市元倉/小山英智

初船出七色テープ風に舞う   石巻市水押/阿部磨

のり面に雪の島々点々と   石巻市二子/北條孝子

ランタンは音なく昇り雪に落つ   石巻市駅前北通り/工藤久之

子に詫びること多かりし大根煮る   東松島市あおい/下山慶子

春隣寒さ身に沁む手酌かな   石巻市三ツ股/浮津文好

百輪のデンドロビウム冬深し   石巻市小船越/堀込光子