【石母田星人 選】
牡蠣雑炊に万石浦が泡立てり 多賀城市八幡/佐藤久嘉
【評】牡蠣はどんな食べ方でもうまい。特に熱々の雑炊はうまみが体に染み渡る。土鍋の中にグツグツと沸きあがる泡は、万石浦がもたらしてくれた輝きだ。
子持鱈高値の札を腹の上 石巻市中里/佐藤いさを
【評】競りにかけられた子持鱈。高値のついた札がのる場所を「腹の上」と表現したことで、誇らしげな立派な魚体が見えてくる。着眼点の良さで成功した。
大注連を張る潮枯れの杉一樹 石巻市桃生町/西條弘子
【評】神社仏閣の境内にある老齢の巨木は、神聖視され御神木としてあがめられている。大きなしめ縄の張られた潮枯れの神木。その姿に勇気をもらう作者。
新しき仁王の草鞋漁はじめ 石巻市相野谷/山崎正子
マラソンの風の一団年新た 石巻市小船越/三浦ときわ
初暦ピレネの村の淡彩画 石巻市中里/川下光子
山眠る落暉自由に遊ばせて 石巻市流留/大槻洋子
自転車を漕げよ漕げよと春の風 石巻市蛇田/石の森市朗
小豆粥神代の味をすするなり 石巻市蛇田/高橋牛歩
お飾りを外して今日の襟正す 石巻市丸井戸/水上孝子
初景色虹を見つける老農夫 石巻市桃生町/佐藤俊幸
春立つや圃場整備のトラクター 東松島市矢本/雫石昭一
恙なく米寿の春を迎へけり 石巻市小船越/芳賀正利
年重ね吾(あ)の年輪や初鏡 石巻市中里/鈴木きえ
貞山の堀掠めをり霜の声 石巻市門脇/佐々木一夫
霜柱帰りそびれし星のくず 東松島市矢本/菅原れい子
初場所の叩いて締める土俵かな 石巻市吉野町/伊藤春夫
寒卵二つ重なる黄身濃くて 仙台市青葉区/狩野好子
寒の入り母が迎えの終電車 石巻市元倉/小山英智
隣人の結びを真似て大根干す 石巻市新館/高橋豊
照り返る発電パネル寒月下 石巻市開北/星ゆき
子らの声ボールと弾むお正月 石巻市広渕/鹿野勝幸
昨夜の雨土やはらかに春めきぬ 東松島市あおい/大江和子
雪降れば物のかたちが隠れんぼ 石巻市駅前北通り/津田調作
ウオーキング気持ち引き立つ春の草 東松島市矢本/奥田和衛