俳句(2/5掲載)

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【石母田星人 選】


牡蠣雑炊に万石浦が泡立てり   多賀城市八幡/佐藤久嘉

【評】牡蠣はどんな食べ方でもうまい。特に熱々の雑炊はうまみが体に染み渡る。土鍋の中にグツグツと沸きあがる泡は、万石浦がもたらしてくれた輝きだ。


子持鱈高値の札を腹の上   石巻市中里/佐藤いさを

【評】競りにかけられた子持鱈。高値のついた札がのる場所を「腹の上」と表現したことで、誇らしげな立派な魚体が見えてくる。着眼点の良さで成功した。


大注連を張る潮枯れの杉一樹   石巻市桃生町/西條弘子

【評】神社仏閣の境内にある老齢の巨木は、神聖視され御神木としてあがめられている。大きなしめ縄の張られた潮枯れの神木。その姿に勇気をもらう作者。


新しき仁王の草鞋漁はじめ   石巻市相野谷/山崎正子

マラソンの風の一団年新た   石巻市小船越/三浦ときわ

初暦ピレネの村の淡彩画   石巻市中里/川下光子

山眠る落暉自由に遊ばせて   石巻市流留/大槻洋子

自転車を漕げよ漕げよと春の風   石巻市蛇田/石の森市朗

小豆粥神代の味をすするなり   石巻市蛇田/高橋牛歩

お飾りを外して今日の襟正す   石巻市丸井戸/水上孝子

初景色虹を見つける老農夫   石巻市桃生町/佐藤俊幸

春立つや圃場整備のトラクター   東松島市矢本/雫石昭一

恙なく米寿の春を迎へけり   石巻市小船越/芳賀正利

年重ね吾(あ)の年輪や初鏡   石巻市中里/鈴木きえ

貞山の堀掠めをり霜の声   石巻市門脇/佐々木一夫

霜柱帰りそびれし星のくず   東松島市矢本/菅原れい子

初場所の叩いて締める土俵かな   石巻市吉野町/伊藤春夫

寒卵二つ重なる黄身濃くて   仙台市青葉区/狩野好子

寒の入り母が迎えの終電車   石巻市元倉/小山英智

隣人の結びを真似て大根干す   石巻市新館/高橋豊

照り返る発電パネル寒月下   石巻市開北/星ゆき

子らの声ボールと弾むお正月   石巻市広渕/鹿野勝幸

昨夜の雨土やはらかに春めきぬ   東松島市あおい/大江和子

雪降れば物のかたちが隠れんぼ   石巻市駅前北通り/津田調作

ウオーキング気持ち引き立つ春の草   東松島市矢本/奥田和衛