俳句(3/19掲載)

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【石母田星人 選】


器にあはせ形をかふる春の水   石巻市新館/高橋豊

【評】どんな器にでも、その形に合わせて納まってしまうのが水。山から海へ巡る流れが春水のイメージだが、生活の中で使う命の水も春の水に違いない。


縮緬の風呂敷に春つつみ来る   石巻市吉野町/伊藤春夫

【評】シボの凹凸が生む色彩としなやかな肌触り。そんな風呂敷に包まれた春とは何か。訪ねて来たのは春の女神佐保姫。街を彩る桜の花を運んで来たのだ。


あちこちに羽ばたきしきり帰る鳥   石巻市広渕/鹿野勝幸

【評】帰る鳥の羽ばたきはエネルギッシュ。渡って来た頃に比べて帰る頃の体は随分大きくなっている。日の長さを感じてそわそわと準備に入った鳥たちだ。


啓蟄や目高に童何を問ふ   石巻市小船越/芳賀正利

これはこれは吾にくださる紙雛   石巻市蛇田/高橋牛歩

早春の木々いつせいに声を出し   石巻市相野谷/山崎正子

声の限り俺はここだと枯野人   石巻市桃生町/佐藤俊幸

病窓に冬の北斗を探したる   石巻市流留/大槻洋子

春の朝窓の光をそつと拭き   東松島市矢本/雫石昭一

朝礼へ地下足袋とんと霜を踏み   多賀城市八幡/佐藤久嘉

水琴窟音色の澄みて雨水かな   仙台市青葉区/狩野好子

冬萌や根はがつちりと土を噛み   石巻市門脇/佐々木一夫

海猫の胸毛ふくらむ余寒かな   石巻市中里/佐藤いさを

建国の日や蘆原の風の音   石巻市桃生町/西條弘子

鶯や忍者のごとく影消せり   石巻市丸井戸/水上孝子

海の母未だ帰らず三月忌   石巻市蛇田/石の森市朗

釜神へ上げたてまつる鮭一尾   石巻市小船越/三浦ときわ

脳のひだつるりと伸びしつららかな   石巻市駅前北通り/小野正雄

白魚の甘きかおりをまといけり   東松島市新東名/板垣美樹

雪解けて流れ何処に七曲り   石巻市元倉/小山英智

高台の終の棲家や震災忌   石巻市小船越/堀込光子

春暁の月が残りし露天風呂   石巻市中里/鈴木登喜子

妹が作りし干支のお雛様   石巻市流留/和泉すみ子

海沿いを気動車一両春隣   石巻市駅前北通り/工藤久之

魚屋の軒より雫干鰈   東松島市あおい/下山慶子