俳句(4/16掲載)

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【石母田星人 選】


先生に瞳あつめて一年生   東松島市あおい/大江和子

【評】自分の席に座って先生の方を向く新1年生。「瞳あつめて」がいい。真剣な顔で少し緊張している様子が浮かぶ。未来を見つめる頼もしいまなざしだ。


ためらいの息の出し入れシャボン玉   石巻市桃生町/佐藤俊幸

【評】初めてシャボン玉を吹いた子どもだろうか。ストローをくわえて一生懸命だ。「ためらい」がその姿を語る。でも、すぐに遠くまで飛ばしてにっこり。


見かへれば朝の青空初つばめ   石巻市流留/大槻洋子
【評】気配を感じ振り向いた。そこには今年初めて見るつばめ。朝の青い空を勢いよく飛び交っていた。その姿を見るうち気持ちがさらに晴れやかになった。


震災に生まれし子らの卒業歌   東松島市矢本/雫石昭一

春宵や久に帰りし子の寝顔   石巻市中里/鈴木登喜子

トンネルに入ると合唱遠足児   石巻市蛇田/高橋牛歩

貝塚に潮騒こもる朧の夜   石巻市相野谷/山崎正子

デコポンの岩石頭春の雨   石巻市蛇田/石の森市朗

孫兵衛の墓誌の長文風光る   石巻市中里/佐藤いさを

若獅子の運びし球や風光る   石巻市丸井戸/水上孝子

花大根地球の回る音のして   東松島市新東名/板垣美樹

大堰の高きを越ゆる春の水   石巻市小船越/芳賀正利

遺されし花器に活けたる桜かな   仙台市青葉区/狩野好子

春の風邪デスクライトのうす埃   石巻市中里/川下光子

油パチパチ夫摘み来たる蕗の薹   石巻市小船越/堀込光子

煮魚の十字の切目猫の恋   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

水切りの石よく跳ねる春の川   石巻市吉野町/伊藤春夫

春暖か土鳩の番来てゐたり   石巻市桃生町/西條弘子

かの揺れもかの波もまた春疾風   多賀城市八幡/佐藤久嘉

春風やデニムとベルト買ひに出る   石巻市新館/高橋豊

ひとまわり大きくなって山笑う   東松島市矢本/菅原れい子

春愁い遠き戦と花だより   石巻市開北/ゆき

春愁や海を見ているモアイ像   松島町磯崎/佐々木清司

春日なた針目の荒き祖母のいて   石巻市渡波町/小林照子

万石の橋より見ゆる春霞   石巻市流留/和泉すみ子