俳句(5/14掲載)

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【石母田星人 選】


若芝にねまり地球の鼓動聴く   石巻市小船越/芳賀正利

【評】もえ始めた芝生に寝転ぶ。あおむけになると高い空に雲や風の流れが見える。芝のぬくみに包まれながら、自らが大地と一体化してゆくのを感じた。


ビバルディの楽譜なぞるか紋白蝶   石巻市小船越/堀込光子

【評】「四季」より春。冒頭の有名なメロディーは楽しく歌う鳥の姿を描いているそうだ。ここでは鳥の代わりに紋白蝶の舞を重ねた。春の光がまぶしい。


ぶらんこや嵩上げ堤高すぎて   石巻市吉野町/伊藤春夫

【評】目の前に海が広がっていたぶらんこ。現在は遮られている。立ちこぎをしたらわずかに見えるかもしれない。そんな期待も打ち砕かれて寂しさが募る。


甲高きこゑが走りて草青む   石巻市丸井戸/水上孝子

眠る士よ黄砂と共に海渡れ   石巻市水押/阿部磨

花菫若き介護の項かな   石巻市元倉/小山英智

花は葉に置かれしままの薬箱   松島町磯崎/佐々木清司

春なれば田畑を喜々とトラクター   石巻市広渕/鹿野勝幸

昼下り淡き光の柿若葉   東松島市矢本/雫石昭一

旅立ちのゆらぎを胸に雪柳   仙台市青葉区/狩野好子

弾力の大地をけって初蛙   石巻市流留/大槻洋子

鳥帰る闇に輪を描く火振舟   石巻市相野谷/山崎正子

舐めて貼る猫の切手やさくら冷え   石巻市中里/川下光子

女教師の後に子の列揚げひばり   石巻市桃生町/西條弘子

黒電話のダイヤル回す座禅草   東松島市新東名/板垣美樹

遠櫻散りて風車のまはりだす   石巻市小船越/三浦ときわ

終活を終へて脱け殻春愁   石巻市門脇/佐々木一夫

竹の子に古寺の僧も鍬を持ち   多賀城市八幡/佐藤久嘉

倒れたる石碑そのまま飛花落花   石巻市中里/鈴木登喜子

潮騒や闇をゆらして干若布   東松島市矢本/菅原れい子

べた凪に釣糸垂し目借時   石巻市新館/高橋豊

分岐点これが最後の蜃気楼   石巻市桃生町/佐藤俊幸

片栗のひしめく里山過疎となり   石巻市渡波町/小林照子

この風が淋しくさせて散る桜   東松島市矢本/奥田和衛

種蒔きし畑に鹿の足の跡   石巻市三ツ股/浮津文好