俳句(5/28掲載)

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【石母田星人 選】


漁(すなどり)を半ばで戻る初端午   石巻市中里/佐藤いさを

【評】誕生した男の子。初めて迎えた端午の節句。今日は親戚を招いて祝いの膳を囲む。漁も早々に切り上げて港へ戻る。エンジン音もいつもより軽やかだ。


鯉のぼり千の友ゐる空は青   東松島市新東名/板垣美樹

【評】初夏の空を悠々と泳ぐ青いこいのぼり。中七以下の表現が巧み。こいのぼりの数を表すとともに、犠牲になった子どもたちへの追悼の思いがこもる。


春あふれライオン山も背のびして   石巻市流留/和泉すみ子

【評】中七はライオンに似た山の通称なのだろう。のどかな春の日に包まれてライオンも大きな背のび。春は「山笑う」というが「背のび」もなかなかいい。


釈迦生るる日よ走り根の隆々と   石巻市相野谷/山崎正子

花菜風いざなふ先の浄土かな   石巻市丸井戸/水上孝子

春しぐれ縄文土器に焦げし痕   石巻市蛇田/石の森市朗

春の月磯の香りの強くなり   石巻市流留/大槻洋子

夏草の刈られて青き息を吐く   石巻市桃生町/西條弘子

初夏や神割崎に光刺す   東松島市矢本/雫石昭一

復興の岸辺散策春日傘   石巻市元倉/小山英智

若楓古都を見おろす天守閣   仙台市青葉区/狩野好子

ふるさとの友より便り躑躅咲く   石巻市小船越/芳賀正利

雄鳥と雌鳥がいて暖かし   石巻市吉野町/伊藤春夫

初蝶や親に指南の十八才   石巻市中里/川下光子

緑陰や奥入瀬の水くねくねと   石巻市中里/鈴木登喜子

たつぷりと水を引きたる夜の蛙   石巻市広渕/鹿野勝幸

へその緒は桐箱ふたつ昭和の日   石巻市開北/ゆき

蒼鷺の水面に写るS字かな   多賀城市八幡/佐藤久嘉

まんぼうや俺の海だと昼寝する   石巻市門脇/佐々木一夫

陽炎や巡航船の行く潮路   石巻市新館/高橋豊

春の夢漕いでも漕いでも岸遠く   石巻市渡波町/小林照子

病癒えいどむシャンソン柿の花   石巻市中里/鈴木きえ

線香花火じっと見つめる余生かな   石巻市桃生町/佐藤俊幸

すかんぽを摘みし畔道昭和の子   石巻市駅前北通り/津田調作

プランターの家庭菜園若葉雨   東松島市あおい/下山慶子