俳句(7/23掲載)

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【石母田星人 選】


若竹の伸び代の空開けてある   石巻市桃生町/西條弘子

【評】伸び代は成長の余地や可能性の意で使われる言葉。国語辞典への採用は平成に入ってからだ。その新語を柔軟に使った「伸び代の空」の表現が絶妙。


世界中走るニュースや簾越し   石巻市中里/上野空

【評】軒先につられている簾(すだれ)。内と外との境界線にありながら向こうを伺うことができる存在だ。多くの出来事が走るのは向こう側。こちらはとても静かだ。


指先で地球を廻す百日紅   石巻市丸井戸/水上孝子

【評】百日紅(さるすべり)は春以降伸びた枝の先に花をつける。重そうな花が細い枝をしならせている。その光景から「指先で地球を廻す」の詩情豊かな表現が生まれた。


耳老いていつも遠雷ばかりなり   石巻市中里/佐藤いさを

夏の夜の棚田に光る水鏡   東松島市矢本/雫石昭一

花うばら島から島へ架かる橋   石巻市中里/川下光子

縄文の磯にも高き卯波寄す   石巻市小船越/芳賀正利

地下道の塒飛び立ち夏燕   仙台市青葉区/狩野好子

夢のごと千の山百合ゆるる谷   石巻市小船越/堀込光子

箒目の波きらきらと青葉寺   石巻市相野谷/山崎正子

縦走や星を掴みて寝るテント   石巻市吉野町/伊藤春夫

軒忍吊るす皺の手短かけれ   石巻市門脇/佐々木一夫

民宿の手斧の跡や夏座敷   石巻市元倉/小山英智

色褪せしすだれの中に吾を見る   石巻市中里/須藤清雄

鯉幟風立つまでをひと睡り   石巻市蛇田/石の森市朗

寝息たてスマホはなさぬ昼寝の子   東松島市あおい/大江和子

六月のインクの匂ふ葉書かな   石巻市新館/高橋豊

ロボットのいきいき運ぶ苺パフェ   石巻市流留/大槻洋子

梅雨じめり朝のチャイムと木魚かな   石巻市広渕/鹿野勝幸

装丁なき電子書籍や旱星   石巻市開北/ゆき

夏草とちから競べや老の腕   石巻市駅前北通り/津田調作

無機質な音白百合の開くとき   東松島市矢本/菅原れい子

風揺らぎロックリズムのハンモック   石巻市桃生町/佐藤俊幸

打ち水に土の匂いのたちこめり   石巻市流留/和泉すみ子

父の日や感謝をこめて大アーチ   石巻市水押/阿部磨