コラム:リヤカー

 子供の頃、神社のある住吉山から住吉小学校までの道路は格好の遊び場でした。そして、時おり通るのはリヤカー。今のようにモーターではなく人が押すか引っ張って動くもので安全この上ないものです。

 これが日本の発明と知った時は驚きでした。英語では単に cart 、自転車に引かれるものは bicycle trailer と言うとのこと。

 リヤカーの「リヤ(リア)」が何を意味するか知ったのは、ずっとあとでした。たとえば、最近、「リア・ビュー・ミラー」を搭載している車が多くなりました。運転席から後ろの景色(リア・ビュー)を見ることができます。「リア」 rear とは「後ろ」を表す言葉です。

 小さい頃から「後ろ」は「バック」 back と覚えてきました。 rear との違いは何でしょう?

 調べてみると、 rear の方がより正式とのこと。また、 rear には「育てる」という意味もあります。不思議な言葉です。

 リヤカーの「カー」は car 。「運ぶ」を表す carry との関係はどうかというと、どちらもラテン語の carrus が語源とのこと。ローマのあの2頭立て馬車のことですね。映画「ベン・ハー」の見せ場のシーンは何度見ても飽きません。

 carrus を語源とする言葉は他にもあります。 career (キャリア=経歴)、 charge (荷を積む)など。

 子供の頃から目にしたリヤカー。多くの事を学べますね。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)