俳句(8/20掲載)

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【石母田星人 選】


小鳥来る朝の庭木に声散らし   石巻市小船越/芳賀正利

【評】秋の季語「小鳥」は、秋に渡って来る小型の鳥や山から里に下りてくる小さな鳥をさす。朝の庭で華やかに鳴く小鳥の姿に、秋の訪れを実感する作者。


いま皮を脱ぎたる蛇のさ緑に   石巻市桃生町/西條弘子

【評】蛇の抜け殻の句はよく見るが、これは脱皮の様子。手も足もないのに、身をくねらせながら奇麗に脱いでゆく。「さ緑に」が変身後の鮮やかさを語る。


白靴のリズムととのふ鼓笛隊   石巻市丸井戸/水上孝子

【評】石巻川開き祭りの鼓笛隊パレードだろうか。注目したのは児童らの白靴。美しくそろった足並みを描いただけなのだが、見事な演奏が聞こえてくる。


終戦日戦死の父や波の音   東松島市矢本/雫石昭一

峰雲や少年の持つこころざし   石巻市中里/佐藤いさを

ゆるゆると蛇の横切る金華山   石巻市流留/大槻洋子

老楽の梅酒仕込めば佳日なり   石巻市中里/川下光子

前山の風が育む夜干梅   石巻市相野谷/山崎正子

遠い日はもう遠花火川開き   多賀城市八幡/佐藤久嘉

外に呼ばれ夏満月へ祈りかな   石巻市広渕/鹿野勝幸

叢の板碑息づく梅雨出水   石巻市駅前北通り/小野正雄

膝おくりに席あけくるる麻衣   石巻市開北/ゆき

ジェット機の空に落書き夏旺ん   東松島市あおい/下山慶子

夜行バス降りた時から兜虫   石巻市吉野町/伊藤春夫

風の香や峠を越えて地域バス   松島町磯崎/佐々木清司

雀の子待ちて餌を置く石の上   石巻市蛇田/石の森市朗

遠雷に肩を濡らして孫の来る   石巻市駅前北通り/津田調作

帰省の孫風がちがふと仰ぐ空   石巻市流留/和泉すみ子

端居してテレビ解説冷めて聞く   石巻市新館/高橋豊

蟬時雨尽きる命を急き立てて   石巻市元倉/小山英智

百回の記念の花火川に映え   石巻市水押/阿部磨

朝まだき釣場へペダル風涼し   石巻市三ツ股/浮津文好

冷酒の喉から疲れ消していく   石巻市桃生町/佐藤俊幸

古民家のうらにわ燃ゆる凌霄花   東松島市あおい/大江和子

亡母のごと意志のゆるがぬ緋のカンナ   東松島市矢本/菅原京子