この「背広」という言葉のルーツを探ると実に色々な説があることが分かります。
背広は外国語の音を表すための当て字であるという説が有力のようです(日本国語大辞典、1967年)。幕末から明治初期にかけて「セビロ」というカタカナ表記が見られるようになったとのこと。
語源については、様々なことが言われています。英国ロンドンの高級紳士服店街「サヴィル・ロウ」( Savile Row =セビルロー)からという説や、市民服を意味する civil clothes から変化したとするものなど色々です。
また、「背部(背の布パーツ)が広い服(紳士服の裁断された布パーツ群の中の背中部分の面積の大きさによる)」や「背筋に縫い目がない」から来ている説もあります。
筆者はかつてイギリスを旅した時にこのサヴィル・ロウを訪れました。イギリス・ロンドン中心部のメイフェア( May-fair )にある通りで、あの「マイ・フェア・レデイ」( My Fair Lady )の世界に迷い込んだ気分になりました。チャーチル、ネルソン提督、ナポレオン3世などの有名な顧客を抱えた店が並ぶ通り golden mile of tailoring の異名をもちます。繁栄を誇った大英帝国の残照を見る思いで歩きました。
古き良きものが存在し、それを大事にしている国、イギリスの奥の深さを感じた次第です。
大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)