俳句(9/3掲載)

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【石母田星人 選】


この炎暑地球のほかに行場なく   石巻市蛇田/石の森市朗

【評】気象庁がこの暑さを異常だったと判断した。「異常で結構、毎年ならたまらん」とあきらめ悟って超然と構えるこの一句。異常な暑さと相対するには、この境地に至るしか方法がないのかもしれない。


出穂の稲のざわめき昼も夜も   石巻市広渕/鹿野勝幸

【評】「稲のざわめき」は、色づき始めた稲の香のことだろう。むせ返るほどだが歓喜にあふれる香だ。


背番号縫ふ人の居る甲子園   石巻市恵み野/森吉子

【評】今年も地元高校の活躍と、好プレーに沸いた夏の甲子園。球児の動きより背番号に目が行く作者。一針一針願いをこめて縫った経験があるのだろう。


八月の空に湧き立つ父の雲   石巻市門脇/佐々木一夫

原爆忌海面を叩け鯨の尾   石巻市中里/佐藤いさを

カナカナや戦語らぬ父なりき   石巻市小船越/堀込光子

夕風に青蘆原のさやぎだす   石巻市相野谷/山崎正子

捩花や道草好きの遠眼鏡   石巻市丸井戸/水上孝子

海鳥や二百十日の波静か   東松島市矢本/雫石昭一

落暉なり鳥海山の雲海に   石巻市流留/大槻洋子

稜線の塔に灯が入る星祭   石巻市桃生町/西條弘子

灌木帯抜けて夏山縦走路   石巻市吉野町/伊藤春夫

米寿には米寿の暮し風は秋   石巻市小船越/芳賀正利

古稀はまだ使いっぱしり盆踊り   石巻市開北/ゆき

秋立つやキルンの煙棚引いて   石巻市新館/高橋豊

遠花火消灯しての物思ひ   石巻市中里/川下光子

伊豆沼を蓮うめ尽くす花尽くす   多賀城市八幡/佐藤久嘉

送り盆乗りたる船と友の顔   石巻市駅前北通り/津田調作

さざ波に足を浸して秋に入る   石巻市元倉/小山英智

夜涼みや土手の川風肌癒す   石巻市水押/阿部磨

秋立ちて朝夕の風心地よし   石巻市三ツ股/浮津文好

息のんで酸素取り込む鮑海女   石巻市桃生町/佐藤俊幸

介護所のスタッフ笑顔夏の空   東松島市赤井/村上和枝

「マイウェイ」添えて真昼のアイスラテ   東松島市矢本/菅原京子

鰻弁をそつとわが手に有難う   石巻市中里/鈴木きえ