俳句(10/1掲載)

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【石母田星人 選】


金風や御堂に続く透かし橋   松島町磯崎/佐々木清司

【評】芭蕉も物理学者アインシュタインも感激した松島の景。その象徴・五大堂へと続く橋。透かしの間からは海が見え心引き締まる。季語の金風が効果的。


蘆原の細き江を来る櫂の音   石巻市相野谷/山崎正子

【評】作者は浜育ち。蘆原の地形を細部まで知っている。下五の「櫂の音」は、生い茂った蘆でまだ見えないが、もうじき見えるはずの小舟の存在を語る。


はねこ踊り過ぎれば風の道となる   石巻市桃生町/西條弘子

【評】「ものうふれあい祭り」が復活。軽快な舞が観衆を魅了した。「風の道」がいい。祭り後の静寂とともに、充足感に満たされた喜びも込められている。


ふる里の庭のぶどうは濃紫   石巻市吉野町/伊藤春夫

【評】豊かな香りと濃厚な甘みのぶどうが出回っている。だが作者の一番はふる里のもの。変わらぬ色と味で待っている。口に入れるとほっとうれしくなる。


水澄みて全て止まったかの如く   石巻市恵み野/森吉子

【評】表現はぎこちない部分もあるが感受性明敏。「全て止まったかの如く」は、少々抽象的なのだが、季語「水澄む」の本質を捉えているような気がする。


嘶きのどこまで続く秋日和   東松島市矢本/雫石昭一

新豆腐ひぐれの雲の高さかな   石巻市流留/大槻洋子

新涼の清掃終へて木魚かな   石巻市広渕/鹿野勝幸

仲秋や川面に大き雲の翳   石巻市中里/佐藤いさを

甍より立ちのぼりたる雲の峰   石巻市丸井戸/水上孝子

むらさきの桔梗にけぶる鬼首   多賀城市八幡/佐藤久嘉

秋立つや合せ鏡の美容院   石巻市中里/川下光子

赤とんぼ嶺に風車が回りをり   石巻市蛇田/石の森市朗

スーパームーン新米の知らせはや   石巻市小船越/堀込光子

霧襖穂高山頂確と踏む   石巻市中里/上野空

水の秋海と落ち合う北上川   石巻市新館/高橋豊

晩学の視力聴力秋思かな   石巻市桃生町/佐藤俊幸

秋の夜に生きよ生きよと落し蓋   石巻市駅前北通り/津田調作

月見草空までのびて主張せよ   石巻市渡波町/小林照子

遠近の夕餉の匂い秋の風   東松島市あおい/下山慶子

蚊帳の子に遠く波音子守唄   石巻市流留/和泉すみ子