俳句(10/29掲載)

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

【石母田星人 選】


現るる雲消ゆる雲あり刈田道   石巻市中里/佐藤いさを

【評】稲刈り後の道を歩く。黄金色の稲穂が豊かに揺れていた田は広々と開けて、刈り株と刈り田の匂いだけが残る。上五中七で満ち足りてゆく心を表現。


落雁や月光の味知つてゐる   石巻市相野谷/山崎正子

【評】夜に渡ることが多く、月と雁の取り合わせは秋の風物詩。中七「月光の味」は、味覚だけではなく五感を超越した表現。月光に満たされた沼への着水。雁たちにとって月光はわが家にも似た安らぎなのだ。


懐かしき歌は湧き出るバスの秋   石巻市流留/大槻洋子

【評】昔の楽曲をよどみなく歌えた。楽しいバスの雰囲気が当時を思い出させてくれたのかもしれない。


銀河濃し二萬の死者の棲むところ   石巻市蛇田/石の森市朗

秋天や太鼓の撥の反りに反る   石巻市開北/ゆき

鬼剣舞の子等に喝采秋の天   石巻市桃生町/西條弘子

風神と雷神唸る花野かな   石巻市吉野町/伊藤春夫

満月や源氏の君の恋語   石巻市丸井戸/水上孝子

茱萸熟れて若き夫婦の畑仕事   石巻市中里/川下光子

高原の闇の底から鉦叩   石巻市小船越/芳賀正利

レーザーで測る水平秋日和   石巻市新館/高橋豊

大岩の祠に降りし紅葉かな   東松島市矢本/雫石昭一

暖簾にも一日の終り夜半の月   松島町磯崎/佐々木清司

ハロウィン巨大南瓜の怪しばむ   東松島市あおい/大江和子

おぼつかぬ腰が運ぶや今年米   石巻市広渕/鹿野勝幸

花びらはめでたき色よ酔芙蓉   石巻市流留/和泉すみ子

白壁に焼かれ佇むとんぼかな   石巻市門脇/佐々木一夫

そろそろと帰り支度の案山子かな   石巻市桃生町/佐藤俊幸

病室を仕切るカーテン秋の風   石巻市元倉/小山英智

聞き耳の不忘山麓吾亦紅   多賀城市八幡/佐藤久嘉

けだるさをまとふポストよ短日よ   石巻市駅前北通り/小野正雄

空気みな金木犀が占領し   石巻市向陽町/成田恵津美

吹かれ落ち踏まれ突つかれ渋柿や   石巻市恵み野/森吉子

山粧ふ太平洋に負けまいと   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

気仙沼に先づは一献海鞘の味   石巻市中里/鈴木きえ