コラム:心で学ぶ

 毎年恒例となっている石巻市内の中学校・英語暗唱弁論大会を拝聴。学校の代表だけあって、どの生徒も立派に発表していました。

 「暗唱する」を英語でどう表すかと思って調べてみると、一つは recite 。 re- は「後ろに、再び」、 cite は「引用する」。

 派生語に recital があります。「リサイタル」という日本語でお馴染みですね。一人または少数の演奏者が観客の前で行うパフォーマンス。クラシック音楽のコンサートを指すことが多いですが、詩の朗読や独唱会にも適用されます。

 recitation contest を思い出しました。原稿を見ても見なくてもいい。とにかく人前で詩や歌を吟ずる...。西洋の芸術、とりわけ演劇や音楽はこういう伝統から生まれたものだと思います。

 learn by heart ...「暗記する」にあたる表現です。中学時代、このイディオムを必死で覚えた記憶があります。でも、よく考えれば「心で学ぶ」って不思議な言い方ですね。調べてみると、 learn by heart は know completely「完璧に知っている/知り尽くしている」。

  He used to live in that town, and he still knows all the streets by heart.
  「彼は以前その町に住んでいた。今でも全ての通りをそらんじることができる」

 「暗記する」を「記憶する」と考えれば memorize (メモライズ)という語が浮上。「メモ」です。名詞 memory (メモリー)は歌詞などの日本語に定着しつつあります。

 英語に限らず語学には「暗唱」「暗記」が欠かせませんね。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)