俳句(11/12掲載)

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【石母田星人 選】


啄木鳥や小舟を繋ぐ青い池   石巻市中里/川下光子


【評】きつつきが幹をたたいている。澄んだ秋空にこだまする。音があるから池はいっそう青さを増す。


温暖で鮭も帰れぬ母の川   石巻市水押/阿部磨


【評】<大海で母なる川の匂い消え>とも詠む。温暖化は身近な漁場や水産資源に深刻な影響を与えている。簡単に止まらぬ温暖化、ならば句を詠もう。常に自然と対峙している俳人なのだ。掲句のように「温暖化で海がおかしい」と警鐘を鳴らせば説得力もある。


藷蔓で地球を曳きし園児かな   石巻市吉野町/伊藤春夫


【評】いも掘り遠足。自分の手で土の感触を楽しみながらつるをひく園児。大げさな比喩表現に脱帽だ。


鳶の輪をほつほつ抜ける蘆火かな   石巻市相野谷/山崎正子

遠雷や南部鉄器の黒びかり   石巻市蛇田/石の森市朗

馬蹄打つ炎のこぼれ行く秋ぞ   石巻市桃生町/西條弘子

群れトンボ消えて一村どつと夜   石巻市中里/佐藤いさを

窓拭きて秋天われのものとなり   石巻市丸井戸/水上孝子

椿象のとびつくタオル秋の暮   石巻市小船越/芳賀正利

縄暖簾香る古民家走り蕎麦   石巻市元倉/小山英智

深海の青へ父追ふ素秋かな   石巻市開北/ゆき

ふる里や久しき道の雪蛍   東松島市矢本/雫石昭一

束の間を永遠に感じる神楽かな   石巻市桃生町/佐藤俊幸

小春日や地球の行く末案じらる   石巻市小船越/堀込光子

歳同じ母の命日十三夜   石巻市流留/大槻洋子

虫の声昭和の彩や郷の島   石巻市駅前北通り/津田調作

山小屋の床に避難所偲びけり   多賀城市八幡/佐藤久嘉

病棟の音ぱぴぷぺぽ秋深し   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

集落に子等の声なし芋嵐   石巻市新館/高橋豊

手荷物の重さ忘るるうろこ雲   石巻市向陽町/成田恵津美

チンペイさん微笑み置いて油点草   石巻市蛇田/櫻井節子

秋日和鉄橋渡り旅気分   石巻市流留/和泉すみ子

泡立草ススキと並び背くらべ   東松島市矢本/奥田和衛

サファイヤの熟柿とろりとごちそうよ   石巻市恵み野/森吉子

推しメンのドラマ終われば秋そぞろ   東松島市矢本/菅原京子