俳句(11/26掲載)

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【石母田星人 選】


一斉に風に抗ふ冬芒   石巻市駅前北通り/小野正雄

【評】冬の芒が風になびいている趣のある風景だ。動詞「抗(あらが)ふ」の効果で単なる写生句とは一線を画している。芒の中に潜んでいる荒々しさが見えるようだ。


雪螢はちきれさうな薪小屋   石巻市相野谷/山崎正子

【評】小屋に高く積まれた薪を「はちきれそう」とうまく表現した。雪螢(綿虫)が飛ぶと初雪も近い。


傷だらけ光るまなこのラガーマン   石巻市桃生町/佐藤俊幸

【評】ラグビー中継では「少しいたんでいます」と倒れた選手を映すことがある。激しい衝突で全く動けない様子なのだが、試合は淡々と進んでゆく。上五・中七で闘争心とともにラグビーの過酷さを詠む。


鮪(しび)捌く少年口を一文字   石巻市中里/佐藤いさを

復興も七分ほどなりはらこ飯   多賀城市八幡/佐藤久嘉

船頭の追分ひびく冬の谿   石巻市桃生町/西條弘子

夕暮の厩舎を駆ける虎落笛   東松島市矢本/雫石昭一

鴨潜る地球の底を見るために   石巻市蛇田/石の森市朗

青空に銀杏黄葉のつづく路   石巻市丸井戸/水上孝子

まつすぐに帰らぬ児等の花野道   松島町磯崎/佐々木清司

千歳飴ひきずりながら手をひかれ   東松島市あおい/大江和子

明日のこと誰にも言はず猫じゃらし   石巻市吉野町/伊藤春夫

毛糸屋の二階雀荘秋深し   石巻市中里/川下光子

長身をかがめて入る秋の部屋   石巻市小船越/芳賀正利

秋晴れやしんがりとなるウォーキング   石巻市流留/大槻洋子

こおろぎや今夜は啼くな酒一人   石巻市門脇/佐々木一夫

民宿の客は一組吊し柿   石巻市元倉/小山英智

朝霧や尾灯教える道の先   石巻市新館/高橋豊

木星と天心わたる後の月   石巻市広渕/鹿野勝幸

疲れ目に釣瓶落しの日暮かな   石巻市向陽町/成田恵津美

玄関に落葉が二三しんとして   石巻市恵み野/森吉子

恥じらいを少し隠して紅葉散る   石巻市中里/須藤清雄

秋の虹案山子と共に仰ぎ見る   東松島市矢本/奥田和衛

秋の海ただただ蒼く果てしなく   石巻市流留/和泉すみ子

昭和とは秋刀魚の煙に曇る月   石巻市駅前北通り/津田調作