コラム:サイン 「印」の役割

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まり「ステイホーム」( stay at home )の要請もひとまず終わりました。

 歴史の授業で習った「漢委奴国王印」。弥生時代に福岡平野を統治した奴国の王が、当時の中国皇帝から贈られたものと考えられています。ハンコの代わりに欧米ではもっぱら「サイン」が使われている...この違いはどこから来ているのでしょうか?

 日本にも「サイン」があります。大名たちがこぞって使った「花押」。これがなぜ一般庶民に行き渡らなかったのか、大きな疑問です。

 ハンコ(判子)にあたる英語は stamp もしくは seal です。一方「サイン」はちょっと複雑です。

 「ここにサインを」は" Sign here, please. "ですが、名詞「サイン」(=署名)は signature (シグナチャー)と言います。つまり、 sign は動詞では「署名する」ですが、名詞では「記号」「合図」「標識」「兆候」「前兆」などの意味になるのです。

   a sign to walk
    歩けの信号

   He made a sign for me to approach.
    彼は私に近づくように合図した

   She made a sign that I ( should ) approach.
    彼女は私に近くに来るようにと身ぶりで示した

   a road ( traffic )sign
    道路(交通)標識

   a sign of the times
    時代の動向

   Yawning is a sign that you are sleepy or tired.
    あくびは眠けや退屈を示すものである

   There're no signs of human habitation.
    人の住んでいる形跡がない

 ひとくちに「サイン」と言っても、実にさまざまな意味があるのですね。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)