俳句(12/10掲載)

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【石母田星人 選】


老いの目に入りて潤す冬菫   石巻市門脇/佐々木一夫

【評】冬日の暖かい場所に咲いたスミレ。色は地味だが枯れ草の中では目立つ。中七の「潤す」が味わい深い。潤すのは目だけでなく作者の全身。齢を重ねたことで、スミレの色合いのよさに気づいたのだ。


五郎助ほー城址に残る隠し井戸   石巻市中里/佐藤いさを

【評】五郎助はフクロウ、ミミズクの別名。隠し井戸というと抜け穴を思う。暗闇をくぐり抜けて、出た先に五郎助が鳴く。想像の世界に引き込まれる。


綱揺らし秋日の塗装大観音   石巻市広渕/鹿野勝幸

【評】「仙台大観音」の化粧直し。職人がロープを頼りに作業をしていた。大観音を覆う秋日が鮮やか。


電飾の古刹の庭の紅葉かな   石巻市小船越/芳賀正利

狛犬の見つめる異界落葉降る   松島町磯崎/佐々木清司

白鳥の湖面大きく開けて待つ   石巻市吉野町/伊藤春夫

瀬音して遡上の鮭のまだ見えず   石巻市桃生町/西條弘子

陽に光り鮭の銀鱗堰を越す   石巻市渡波/栗田弥超

鮭捌き腹子の鼓動手に伝ふ   石巻市水押/阿部磨

山ひだに雪の影濃し冬に入る   石巻市流留/大槻洋子

小春日や羽衣曳きて雲のゆく   石巻市丸井戸/水上孝子

あら草の中にひときわ露の草   石巻市向陽町/成田恵津美

木枯や庭の片隅松陰嚢   東松島市矢本/雫石昭一

地中なる古窯遺跡や新松子   石巻市小船越/堀込光子

天気予報の雨が気になる吊し柿   石巻市相野谷/山崎正子

干し柿や何時もみちのく負け戦   多賀城市八幡/佐藤久嘉

対岸の紅葉の山と対峙して   石巻市蛇田/石の森市朗

リハビリを終えて家路の柿落葉   石巻市元倉/小山英智

クラリネットの音符ふと載る秋ひさし   石巻市開北/ゆき

鹿垣やテレビに映る一軒家   石巻市中里/川下光子

ワンマンの汽車の両側草紅葉   石巻市新館/高橋豊

夕暮れに落葉の音か耳すます   石巻市流留/和泉すみ子

紅さしてちょっと背のばし冬茶会   石巻市渡波町/小林照子

冬の空下弦の月の白さかな   石巻市三ツ股/浮津文好

一行の日誌にはさむみやぎの萩   東松島市矢本/菅原れい子