俳句(12/24掲載)

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【石母田星人 選】


牡蠣啜る牡鹿の海のうまさかな   石巻市吉野町/伊藤春夫

【評】汁ごと味わう海のミルク。口中に広がる独特ののどごしや香りが、牡鹿の海の輝きを連れてくる。この上質な味の陰には、多くの人の努力があることを知っているから余計にうまいのだ。郷土賛歌。


稽古日の格子戸くぐる青木の実   石巻市中里/川下光子

【評】先生のお宅だろうか。中七「格子戸くぐる」からは、稽古に臨む前の緊張感が伝わってくる。その気分を和らげてくれるのがつややかで赤い青木の実。


夕暮の早足かけつこ冬障子   石巻市丸井戸/水上孝子

【評】「かけつこ」で子どもの存在を示す。きょうだいだろうか。障子の向こうには温かな団欒が待つ。


太平洋眺めて広し年忘   東松島市矢本/雫石昭一

北上川を冬が流れて来たりけり   石巻市蛇田/石の森市朗

北上の水面穏やか浮寝鳥   石巻市元倉/小山英智

冬ざれや野晒しのまま四つ手網   石巻市駅前北通り/小野正雄

白鳥や餌場の行き来声あげて   石巻市広渕/鹿野勝幸

荒海やりんりんと立つ鷹一羽   石巻市相野谷/山崎正子

小雪降る千石船の港町   石巻市小船越/芳賀正利

産土の百磴を掃き十二月   石巻市桃生町/西條弘子

銀山の川のほとりに雪見茶屋   多賀城市八幡/佐藤久嘉

いぶかしく沖波眺め懐手   石巻市中里/佐藤いさを

北下し肩組みあって長屋門   松島町磯崎/佐々木清司

線路沿い風が操る枯れ尾花   石巻市蛇田/櫻井節子

放牧の牛の頭に草虱   石巻市中里/鈴木登喜子

放牧の牛郷に降り山眠る   石巻市新館/高橋豊

年の暮キャリーカートの長い列   東松島市あおい/大江和子

クリスマスツリーを添へし重湯かな   石巻市流留/大槻洋子

深秋を裂く解体の重機音   石巻市開北/ゆき

カーブミラーに写る夕陽が急かせおり   石巻市駅前北通り/津田調作

糸に乗り蜘蛛旅立つや秋日和   石巻市小船越/堀込光子

出遅れのさなぎ急げよ神の留守   石巻市桃生町/佐藤俊幸

干し柿の手間の分だけ美味さ染み   石巻市向陽町/成田恵津美

寒き夜音さえ無きや独り居は   石巻市流留/和泉すみ子