投稿より 「ご近所の助け合い」

 人様には愛情と情けを持って接しなさい。こう私はわが子や孫に言い聞かせてきました。

 この言葉は、私が成長する過程で父親から言われていたことです。いつも心の片隅にありました。年を重ねるごとに自然に振る舞えるようになった自分に安らぎを感じています。

 愛とは「大切に思う」温かい感情と本に書いています。先輩や自分を取り巻く多くの人々を敬い、時には優しい言葉をかけ、手を差し伸べる。それも愛と考えます。

 東日本大震災後の10年ほど、80歳になって免許を返納するまで、私も人のために尽くした経験があります。ご近所の1人世帯の3人のおばあさんに声をかけ、私の車に同乗してもらいました。病院や選挙の投票所にお連れした時の光景を懐かしく思い出します。

 石巻市の農村地帯では、同じ1人世帯でも、息子さんが仙台あたりで働いていて、仕事が休みの日に病院に連れて行ってくれる人もいます。私が乗せたのは、頼る人がまったくいない高齢の女性たちです。

 今は、3人のうち90代の方が亡くなり、もう一人の90代のおばあさんが救急搬送されて、入院中です。このおばあさんが搬送される20日ほど前、つえを突いて悪い足を引きながらわが家の玄関まで来てくれました。

 「今まで長い間ありがとね。あなたの心遣いが本当にうれしかった」

 私の手を取り、お礼を言われたのです。この言葉を頂いた時、私はボロボロと涙がこぼれ落ちました。お礼に恐縮しつつも、おばあさんに対する愛しさが大きくなったような気がしました。昨年9月。八十路になって経験した心温まる一日でした。

 昨今は昔と違い、世間の親しみが薄れてしまい、閉塞感を感じているのは私だけでしょうか。愛も言葉にしないと伝わらないことが多々あります。愛は時代に左右されるものではありません。人を愛し、人様から愛されていることの幸せを共感できる世であってほしいと願います。

(小山祥子 82歳 無職 石巻市鹿又)

 「愛の物語」応募は、字数が1面「つつじ野」と同じ700字と、原稿用紙1枚の400字の2種類から選ぶ。書式は自由で、メールと郵便で受け付ける。優秀作は朗読会=2月17日(土)午後2時、かほくホール=で紹介する。
 随想に題を付け、住所、氏名、年齢、職業、連絡先の電話番号を明記する。郵送先は〒986-0827 石巻市千石町4-42 三陸河北新報社総務部「愛の物語」係。メールはmt.kanno@sanrikukahoku.jp。連絡先は0225(96)0321の「愛の物語」係。