投稿より 「失語障害者の音紡ぎ」

 昨年10月15日は朝から土砂降りでした。車で美里町の会場に向かう途中、「ノエルズ」の代表に渡す小さな花束を忘れたことを思い出し、引き返しました。急ぐあまり30分ロスしてしまいました。

 缶詰工場のステージで、高次機能障害者とその家族でつくる「かもめの会」と、神奈川県の音楽グループ「ノエルズ」との合同ハンドベル演奏会が開催されました。悪天候にもかかわらず、会発足当初からの支援者も多く応援に来てくれました。私は会の事務局を務め、失語障害の夫とともに演奏に参加しました。

 会員である患者9人とその家族は皆、語るに語れない差別や偏見、つらさを抱えています。この時ばかりは忘れ、全身を使って思いっきりハンドベルを振り続けます。

 障害がある故のトラブルや誤解を風のごとく吹き飛ばすベルの音。神奈川県から来てくれたノエルズ21人の天使のような笑顔が会場の熱気を爆発させます。

 手話を手伝ってくれた若いほのかさん、大崎市松山のハンドベルグループも加わり、生涯忘れ得ぬ大演奏会になりました。

 障害の機能回復を目指す音楽療法は私たちの心の支えになっています。東日本大震災後、ノエルズの皆さんに勧められ、ベルの寄贈を受けて始まった合同演奏会は11回目です。

 おととし、仲間の1人を失い、先の不安を思い煩っている私たち。ノエルズの仲間に「去年よりうまくなったね」と声をかけられることが励みになります。歩みを止めることなく、大空に向かって高く高く手を上げ、音を紡ぎます。細くて頼りない糸たちが集まって強くなりますように、と、願いを込めて奏でます。「私たちだけの愛の物語」

(後藤厚子 71歳 塾講師 石巻市沢田)

 「愛の物語」応募は、字数が1面「つつじ野」と同じ700字と、原稿用紙1枚の400字の2種類から選ぶ。書式は自由で、メールと郵便で受け付ける。優秀作は朗読会=2月17日(土)午後2時、かほくホール=で紹介する。
 随想に題を付け、住所、氏名、年齢、職業、連絡先の電話番号を明記する。郵送先は〒986-0827 石巻市千石町4-42 三陸河北新報社総務部「愛の物語」係。メールはmt.kanno@sanrikukahoku.jp 連絡先は0225(96)0321の「愛の物語」係。