この物語は、筆者が広島県福山市の中学で出会った男性教師を回想します。
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私は幼い時から少し皆と違っていました。中学に入ってもそれは変わらず、皆からイジメられていました。そんな私の心を救ってくれたのが、教頭先生でした。
「どうしたのですか」
いつも元気のない私を見て、優しく声をかけてくださいました。私はクラスの中でイジメられていることを話しました。
「それは大変ですね。何かあったら私の所に話をしに来てくださいね」
こう言われました。それから教頭先生との心の交流が始まりました。
ある日、イジメがピークになり、私は急いで学校から家へ帰りました。
「学校なんてもう行かない」
こんな気持ちでいっぱいで、声をかけられたのにも気付きませんでした。
「ノリカさーん」
後ろから教頭先生の声がしたのでした。私はそこに立ち止まりました。
「どうしたんですか。学校で声をかけても行ってしまったので、追いかけてきました」
「大丈夫です。ありがとうございました」
私は心から礼を言いました。心の中で思いました。
(この先生なら信じられる。もう一度学校に行こう)
あれから35年。今でも、私はあの教頭先生に心からありがとうございましたとお礼が言いたいのです。
(渡辺伯加 50歳 無職 仙台市太白区旗立)
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「愛の物語」応募は、字数が1面「つつじ野」と同じ700字と、原稿用紙1枚の400字の2種類から選ぶ。書式は自由で、メールと郵便で受け付ける。優秀作は朗読会=2月17日(土)午後2時、かほくホール=で紹介する。
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