投稿より 「母の教え」

 母が亡くなって10年になる。野球一筋だった私を一番応援してくれたのが母であった。

 私が幼い頃は、父が製鉄所で3交代勤務だったこともあり、母がよくキャッチボールの相手をしてくれた。小学3年生くらいになると「ボールが速くなったから、怖くてもう相手はできない」と言いながら、成長を喜んでくれた。笑顔を忘れることができない。

 そんな母から生きる上で一番大切にしなさいと言われたのは「仲間を大切にすること」。企業の硬式野球部の監督をやっていた私は、その言葉を胸にチームプレーの大切さを身をもって感じた。現在の職場においても同様に組織を大切にして生きている。

 2011年3月の東日本大震災において、私の故郷である釜石市も甚大なる被害を受けた。数人の知人が亡くなり、行方不明となっている。震災後、母は仲間を失ったことへのショックでふさぎこむようになった。

 しかし、少しずつ時間をかけて、失った仲間のためにも「前向きに生きよう」と言ってくれるようになった。うれしく、息子としてほっとしたことを覚えている。

 その直後、病に侵され天国へ旅立った。家族であり、一番の味方であり、そして仲間である母を失ったショックは想像を絶するものであった。

 母から学んだ「仲間を大切にする」という教えのもと、母がそうしたように私も仲間である母のためにも前向きに、そして多くの仲間を大切にしながら今後の人生を歩んでいきたいと思う。

(前田直樹 45歳 会社員 石巻市宜山町)

 「愛の物語」応募は、字数が1面「つつじ野」と同じ700字と、原稿用紙1枚の400字の2種類から選ぶ。書式は自由で、メールと郵便で受け付ける。締め切りは1月末から当面延期する。優秀作は朗読会=2月17日(土)午後2時、かほくホール=で紹介する。
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