「きょうだいが欲しい」
一人っ子だった私は、きょうだいがいる周りの友人の生活に憧れていた。なぜ私にはお兄ちゃんもお姉ちゃんも弟も妹もいないのだろうか。気づけば毎日口癖のようにきょうだいが欲しい、と呟き、クリスマスには毎年決まってサンタさんに「きょうだいが欲しい」と願った。
私が小学6年になった夏。家族が真剣な顔つきで私にこう告げた。
「お姉ちゃんになるよ」
幼い頃から願っていたきょうだいができること。早く私の、自分だけのきょうだいに会いたい、一緒に遊びたい、「お姉ちゃん」と呼んでもらいたい。私は喜びとうれしさでいっぱいだった。世界中の人々に自慢したかった。私がお姉ちゃんになるよ、と。
だが、きょうだいができる、ということはうれしいことばかりではなかった。家族と一緒に外出する機会は減り、今まで当たり前だと思っていた「家族が自分にだけ時間を使ってくれること」が当たり前ではないことにも気づいた。
きょうだいが欲しいと意気込んでいた私の気持ちとは裏腹に不安や心配が大きくなっていった。
「あ、今蹴ったよ」
初めてのきょうだいは弟だった。弟は母のおなかの中にいるときから活発に動き、元気に成長していた。それとともに、弟への愛情は日々高まり、生まれてくることが待ち遠しかった。
中学1年の春。念願の弟が産まれた。待ちに待った弟。私は一刻も早く抱きしめたい思いだった。しかし、新型コロナウイルスの影響により面会ができず、初めて会うことができたのは1週間後だった。
とても小さく、少しでも触れたら壊れてしまいそうなほど儚(はかな)かった弟。私は抱き方も分からなかったが、どんな物に触るよりも優しく、でも強く、姉としての覚悟を持って大切な弟を抱きしめた。
(尾形柑南 14歳 東松島市矢本一中2年)
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「愛の物語」応募は、字数が1面「つつじ野」と同じ700字と、原稿用紙1枚の400字の2種類から選ぶ。書式は自由で、メールと郵便で受け付ける。締め切りは15日。優秀作は朗読会=17日(土)午後2時、かほくホール=で紹介する。
随想に題を付け、住所、氏名、年齢、職業、連絡先の電話番号を明記する。郵送先は〒986-0827 石巻市千石町4-42 三陸河北新報社総務部「愛の物語」係。メールはmt.kanno@sanrikukahoku.jp 連絡先は0225(96)0321の「愛の物語」係。