うまく言葉にできないけれど、幼い頃から私が抱き感じたのは、母の手から伝わってくる「愛情」なのでしょう。
母と私たち3姉妹には二つのおまじないがあります。「ぐっすり眠れるおまじない」と「きっと大丈夫のおまじない」です。母の手が私の手を包み、手のひらをギュギュッと親指で押しながら、呪文のようにおまじないを唱えるのです。
今はもう幼い頃のように怖い夢は見ず、ぐっすり眠れるおまじないの出番はなくなりました。一番下の妹がしてもらっているのを横目で見ているだけです。
試験や行事前は必ず大丈夫のおまじないをお願いします。母の手や指から伝わる温かな体温と心地よい声は、いつも緊張感でいっぱいになる気持ちの真ん中にストンと入り、不思議と落ちついて頑張れる気になります。
わが子が怖い夢を見ずにぐっすり眠れるように、そしてどんな事でもきっと大丈夫だよとの気持ちを込めて、母が即興でひねり出したのでしょう。この二つのおまじないの呪文、言霊はポジティブで私たち姉妹の宝物です。
そして、母と手と手が触れ合うことで「絆ホルモン」「幸せホルモン」と呼ばれるオキシトシンが脳から分泌され、心が和らいでリラックスできるのだと思います。このことを母が知ってか知らぬかは、分かりません。
私が「お母さん」と呼ばれる存在になったとき、このおまじないを懐かしくじんわりと思い出し、子にしてあげることができたら、とてもすてきです。その子が自分と同じような温かな気持ちを繰り返し感じたとき、今うまく言葉にできない感情の答えが、やっぱり「母からの愛情」だったと気付くことができたのなら幸せです。
(土井いちの 14歳 東松島市矢本一中2年)
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「愛の物語」応募は、字数が1面「つつじ野」と同じ700字と、原稿用紙1枚の400字の2種類から選ぶ。書式は自由で、メールと郵便で受け付ける。締め切りは1月末から当面延期する。優秀作は朗読会=2月17日(土)午後2時、かほくホール=で紹介する。
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