投稿より 「 "出会い" に感謝」

 神様は人々に乗り越えられない試練は決して与えない、と言います。

 東日本大震災が起きたあの日、家を失い、どうすることもできず、小学校の体育館で約450人の人たちと過ごすことになりました。私にとって、毎日がむなしく、生きる気力も失いかけた日々でした。

 自宅は石巻市浜松町にありました。父は台所で逃げ場を失い、津波に襲われ亡くなっていました。仕事で自宅にいなかった私は自責の念にかられ、毎日、夜になると泣いていました。

 小学校の避難所に国際協力機構(JICA)のOB、OGの方々が来てくださり、本格的に炊き出しが始まり、私は自分の心の中にできた穴を埋めるように夢中でお手伝いをするようになっていました。石巻ボランティアセンターが整っていない中、鹿児島、宮崎、東京、埼玉、山形と全国各地から駆け付け、私たちのために力を尽くしてくれたのです。私がいた避難所は学校全体で約1800人が避難していました。

 見知らぬおばあさんに炊き出しのご飯を差し上げた時、「この年になって生きていていいんだべが」と言われました。私は「生かされたんだから、生きましょう」と返しました。その答えは、私の心の奥にある言葉そのものでした。

 あの時、全国各地から来てくれた方々に出会わなければ、私の心は折れたままでした。限られた食材の中で、毎晩、メニューを考え合った日々は一生忘れられない時間です。ボランティアの方々と今も連絡を取り合っています。「乗り越えられない試練はない」。「出会い」は必然だったと心から思っています。本当にありがとう。

(阿部恵久代 65歳 放課後児童クラブ支援員 石巻市垂水町)

 「読者の愛の物語」掲載作と「つつじ野選」収録作の一部を対象とした朗読会が17日午後2時、三陸河北新報社(石巻市千石町4―42)1階かほくホールで開催される。フリーアナウンサー阿部未来さんが13作品を朗読する。
 入場無料。午後1時30分開場し、先着100人が入場できる。敷地内に来場者用駐車場がないため、同社は電車かバスの利用をお願いしている。