上京して間もない1961年4月、上野の東京文化会館で開かれたアルツール・ルービンシュタイン( Arthur Rubinstein, 1887~1982年、ポーランド出身のピアニスト)のコンサートに同郷の友と共に出かけました。音楽に造詣が深い彼に誘われた次第。
東京文化会館は、東京都台東区上野公園の一角にある東京都立のホールで東京都交響楽団が本拠地とし前川国男の設計による当時素晴らしいと評判の建物です。 Tokyo bunka-kaikan と日本語で表示されています。
大学の入学式は講堂で行われ、厳粛な式で感動しました。ほどなく加わった英語劇のサークルの「本拠地」がその講堂でしたが、指導にあたられた外国人の先生から auditorium という聞き慣れない呼称を知らされました。
辞書には次のような例文が載っています。
The auditorium has a seating capacity of 800.
(講堂は座席数で800人分の収容力がある)
The crowd poured out of the auditorium.
(群衆は公会堂からドッと出てきた)
この講堂で一番最初に接し私の「英語劇人生」の出発となったのは、シェークスピアの Measure for Measure という劇でした。「以尺報尺」などと、邦訳され問題作の一つとなっています。
話題を auditorium に戻しましょう。
audio は「オーディオ」でお馴染みな「聴」を意味する言葉。「音声」に重きを置くシェークスピアの劇にぴったりです。先生はそのことを伝えたく、講堂を auditorium と言ったのだと思います。
Measure for Measure で私は Abhorson という首切り役人の役を与えられました。忘れられない思い出です。
大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)