俳句(7/21掲載)

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【石母田星人 選】


竹伐つて背山に殖ゆる星の数   石巻市相野谷/山崎正子

【評】竹を伐って見通しのよくなった背山。きのうまで全く見えなかった星がうねるように輝いている。伐られた竹は、星を祭る七夕飾りになるに違いない。


ロボットの運んで来たる夏料理   石巻市桃生町/西條弘子

【評】配膳ロボットが活躍している昨今。その姿を詠んだ句は多いが、夏料理との取り合わせは新鮮だ。


立葵瓦礫の中に立ち上がる   東松島市あおい/大江和子

【評】下から順に咲く立葵。毎日見ていると愛着がわく。どんなに身近に感じても、心に沈潜するものがなければ作句の動機は生まれない。これは震災の年の花なのだろう。瓦礫の中の葵に勇気をもらった作者。


被災地を本籍としてかたつむり   多賀城市八幡/佐藤久嘉

磯の香の小道夏蝶前後して   石巻市渡波町/小林照子

不如帰僧侶の語る大津波   石巻市小船越/堀込光子

防砂林皆の力や緑映ゆ   石巻市水押/阿部磨

遠花火里の山河の匂ひかな   東松島市矢本/雫石昭一

南風吹くときは鯨の大欠伸   石巻市小船越/芳賀正利

滴りや遅れて開く水みくじ   松島町磯崎/佐々木清司

包丁をひたすら研ぎて梅雨入かな   石巻市駅前北通り/小野正雄

父の日や父の好みの時代劇   石巻市中里/佐藤いさを

袈裟懸けに闇を切り裂き蛍飛ぶ   石巻市元倉/小山英智

スモークツリー朦朧体の絵の如し   東松島市赤井/志田正次

形よき山の深緑川に映ゆ   石巻市広渕/鹿野勝幸

遠ざかるアイスキャンディー売りの鈴   石巻市中里/川下光子

白き皿ふたつポロンとさくらんぼ   石巻市丸井戸/水上孝子

鮎解禁自活する子に会いに行く   石巻市流留/大槻洋子

鹿避けの網張り詰める芒種かな   石巻市新館/高橋豊

渋団扇しぶとい王の逃げ一手   石巻市桃生町/佐藤俊幸

朝凪や寄せる波音ゆるやかに   石巻市門脇/佐々木一夫

颯爽と漕ぎだすペダル衣更え   石巻市湊/斎田流雲

宿坊の固き枕や明易し   東松島市あおい/下山慶子

梅雨深し入院までの日を数え   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

自家製のスイカ家族の笑い声   大崎市鹿島台/千葉梨杏