俳句(8/18掲載)

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

【石母田星人 選】


夏祭りえびすの顔を持ち歩き   石巻市駅前北通り/津田調作

【評】夏祭りの会場に入る。擦れ違う人々は童心に返ったように、みんなにっこりと幸せそうな顔をしている。いつしか自分も笑顔になっているのに気づく。


引き揚げはリュック水筒終戦日   石巻市広渕/鹿野勝幸

【評】作者5歳の時の回想の句。引き揚げの記憶は身に着けていたリュックと水筒から始まり、生々しくよみがえる。戦争体験を物に語らせた重い詠嘆だ。


足踏みの声を揃へて夏旺ん   石巻市中里/川下光子

【評】活力みなぎる夏という意の季語「夏旺(なつさか)ん」のイメージが支配する一句。足踏みの主は高齢者よりも真っ白いユニフォーム姿の子どもたちが浮かぶ。


海光る離島の茄子の火照りかな   多賀城市八幡/佐藤久嘉

蟬時雨只一心に時を打つ   石巻市中里/須藤清雄

手も足もほったらかして籠枕   石巻市中里/佐藤いさを

万緑や天に真っ直ぐ草木塔   松島町磯崎/佐々木清司

縦走を終へてバス待つ缶ビール   石巻市流留/大槻洋子

涼風や太平洋の息吹かな   石巻市流留/和泉すみ子

涼しさや渚を跳ねる波白き   石巻市門脇/佐々木一夫

小太りの夏大根に育ちけり   石巻市小船越/芳賀正利

蓮の沼妻と違へて乗る小舟   石巻市蛇田/石の森市朗

沁み渡る愛の讃歌や夏祭り   石巻市丸井戸/水上孝子

稲の花雲の切れ間の光浴ぶ   石巻市駅前北通り/小野正雄

夏空に五輪描いてインパルス   石巻市元倉/小山英智

栗駒の風を背に袋掛け   石巻市桃生町/西條弘子

片蔭や街から消えし百貨店   石巻市新館/高橋豊

いつやらに喪の席上座白扇子   石巻市開北/ゆき

津波跡僧侶の手なる紅蓮華   石巻市小船越/堀込光子

凌霄花夕陽のやうに落ちてゆく   東松島市あおい/大江和子

雀には釜洗い飯夏の夜   石巻市渡波町/小林照子

憂鬱と薔薇が書けた日梅雨明ける   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

病院の待合室の花氷   東松島市あおい/下山慶子

中指で西瓜弾いて品定め   東松島市赤井/志田正次

石組のいつもの場所や蛇の殻   石巻市真野/高橋としみ