俳句(9/1掲載)

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【石母田星人 選】


ふうりんがかぜをはこびしおほひろま   石巻市丸井戸/水上孝子

【評】大広間の隅で微かに風鈴が鳴った。しばらくして自分のもとへ風が及んだ。風鈴は音で涼を感じるもの。この句は、鳴ってから涼を感じるまでの時間に焦点を当てた。風のやさしさを仮名で表した意欲作。


銀漢や古き小路に古き夜話   松島町磯崎/佐々木清司

【評】中七以下は地上の景だが、澄んだ夜空を見ていると、銀河にも小路や夜話がありそうに感じる。


をみならの汗が漕ぎだす孫兵衛船   石巻市蛇田/石の森市朗

【評】やはり若手が目立つレース。この句は懸命にオールをこぐ年配女性に注目。「汗が漕ぎだす」には「まだまだ負けていられない」という思いが乗る。


梅干の滅法辛い終戦日   石巻市吉野町/伊藤春夫

遠き日は遠き日のまま終戦日   石巻市中里/佐藤いさを

蜩の大合唱に里ゆれる   石巻市小船越/芳賀正利

一つ葉に蟬殻二つすがりをり   石巻市広渕/鹿野勝幸

蝉しぐれ永遠の世願う祈りかな   石巻市新館/高橋豊

干涸びて空屋の増えし蝸牛   石巻市門脇/佐々木一夫

灯籠に書く新しき筆ほぐす   石巻市桃生町/西條弘子

心音や窪む古道の苔青し   石巻市流留/大槻洋子

鰤揚がる市場驚く海の変   石巻市駅前北通り/小野正雄

炎天や遠近法にレールかな   多賀城市八幡/佐藤久嘉

帰省子のみやげは孫の笑顔かな   石巻市元倉/小山英智

夏帽子風に誘われ街歩き   石巻市湊/斎田流雲

クーラーの客室に待つ五分前   石巻市中里/川下光子

墓参坂の上には雲ありて   石巻市流留/和泉すみ子

爽涼を求め古刹の岩清水   東松島市赤井/志田正次

女郎蜘蛛まぶしき空に網を張り   石巻市駅前北通り/津田調作

暑き朝静かに茄子の花の咲く   石巻市真野/高橋としみ

片陰を飛び石のごと歩きけり   石巻市向陽町/成田恵津美

入道雲川原毛地獄の大湯あり   石巻市中里/鈴木登喜子

幼子の命の味や白桃缶   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

球児打つボールは捕られ夏終る   石巻市桃生町/佐藤俊幸

照りつける陽に草を刈る八十路かな   石巻市三ツ股/浮津文好