俳句(10/13掲載)

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【石母田星人 選】


歌声の聞こえぬ校舎秋思湧く   石巻市渡波町/小林照子

【評】秋思は秋の寂しさに誘われた物思いのこと。震災遺構の校舎での作句だろうか。上五の「歌声」は秋の気配の中に浮かんできた作者の記憶。きよらかなハーモニーが子どもの姿とともによみがえった。


惑星を少し離れて蜘蛛の糸   石巻市蛇田/石の森市朗

【評】高い所に張られた蜘蛛(くも)の巣。それを「惑星を少し離れて」と大胆に詠む。少しでも地上を離れればこの星を出たことになる。奇抜で柔軟な発想が光る。


秋の雲いわしかうろこラスク食(は)む   東松島市矢本/菅原京子

【評】香ばしい焼き菓子をカリカリと食べる。その音が窓外の雲の形を楽しく表現。俳句はリズムだ。


網繕う余生つばくら帰りけり   石巻市中里/佐藤いさを

秋雲と流れて行くや幼き日   石巻市駅前北通り/津田調作

箟岳の社の下の穂波かな   多賀城市八幡/佐藤久嘉

田の神の香る新米噛み締める   石巻市元倉/小山英智

龍淵に潜み霖雨の差配かな   東松島市赤井/志田正次

原爆忌天に祈りて肉を焼く   石巻市駅前北通り/小野正雄

果しなき秋の夜空に月と星   石巻市小船越/芳賀正利

古の土器目に触れて秋の風   石巻市蛇田/櫻井節子

借景に名月そえて肘枕   石巻市湊/斎田流雲

青葡萄つまみ一句の定まらず   石巻市桃生町/西條弘子

同人誌の母の遺作や秋の夜半   石巻市渡波/阿部太子

鶏頭の風のやはらぐ供物花   石巻市丸井戸/水上孝子

百寿なる敬老の日の「支那の夜」   石巻市流留/大槻洋子

百日紅昨日のことはもう忘れ   石巻市のぞみ野/阿部佐代子

日の色を着て脱ぐまでの酔芙蓉   松島町磯崎/佐々木清司

出荷式新米積んで貨車過ぐる   東松島市あおい/大江和子

窯出しに汗のしたたる残暑かな   石巻市新館/高橋豊

温暖化世界に及ぶ残暑かな   石巻市広渕/鹿野勝幸

風邪のこす五体反らせて受く秋日   石巻市開北/ゆき

秋刀魚食ふ内臓しっぽの先までも   石巻市流留/和泉すみ子

米不足何を騒ぐか稲の秋   石巻市桃生町/佐藤俊幸

秋天やMLBの大記録   石巻市小船越/堀込光子