俳句(10/27掲載)

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

【石母田星人 選】


百人の喜寿のつどひや大花野   石巻市流留/和泉すみ子

【評】大広間には懐かしい顔がそろった。いつもの同窓会ではなく喜寿を祝う会。季語大花野には、この年代特有のはつらつとしたパワーがこめられている。


柿剥けば夕日しづかに落ちにけり   石巻市丸井戸/水上孝子

【評】柿をむくことと落日に因果関係はない。だが妙に納得する。柿に触れたことで、心に生まれた夕日なのかもしれない。当然、子規の句「柿くへば~」を思ったが、無理ない連想の飛躍と詩性に魅せられた。


猫じゃらし稚児行列の崩れがち   石巻市桃生町/西條弘子

【評】色鮮やかな衣装で練り歩く稚児たち。初めは神妙でもやがてこうなる。季語猫じゃらしが効果的。


百態の鯨波に釣瓶落としかな   石巻市中里/佐藤いさを

客船の丸い窓から天の川   石巻市小船越/芳賀正利

小窓より出入り幾度秋茜   石巻市元倉/小山英智

秋暑しさくら色して鍋の蛸   石巻市中里/川下光子

あめ色の無花果もある漁師飯   石巻市流留/大槻洋子

初秋刀魚焦げし煙に涙かな   石巻市門脇/佐々木一夫

小春日や塔に風待つ風見鶏   松島町磯崎/佐々木清司

けだるさの漂ふ秋のトランペット   石巻市駅前北通り/小野正雄

つばひろの佐藤忠良夏帽子   石巻市蛇田/石の森市朗

引っ越しに梱包されて君子蘭   多賀城市八幡/佐藤久嘉

香を放つ津波に耐えし金木犀   石巻市新館/高橋豊

地震傷に塩をすり込む秋出水   石巻市広渕/鹿野勝幸

朝顔やのぼりのぼりて空に溶け   石巻市小船越/堀込光子

桃の皮赤子の肌のごと柔し   石巻市向陽町/成田恵津美

秋の空乗り継ぎまでの四十分   東松島市矢本/菅原京子

秋の雨電話の向こうに友の声   石巻市湊/斎田流雲

笛の音も遠き祭や秋の空   石巻市駅前北通り/津田調作

母歌う湯の町エレジー草の花   石巻市渡波町/小林照子

運動会赤白の玉ポップコーン   東松島市赤井/志田正次

木犀の香りが消えて秋深し   石巻市水押/阿部磨

二度咲の薔薇に小雨の薄化粧   石巻市水押/小山信吾

神無月どこへいったかあの暑さ   石巻市三ツ股/浮津文好