俳句(11/10掲載)

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

【石母田星人 選】


秋澄むやレンズの先は箒星   石巻市小船越/堀込光子

【評】紫金山・アトラス彗星を観測したのだろう。日暮れとともに西の低空で明るさを増した彗星。望遠鏡か双眼鏡のレンズを通せば、美しく伸びた尾も確認できたはずだ。晩秋の天体ショーに心洗われた作者。


雄島より暮るる松島翁の忌   石巻市中里/佐藤いさを

【評】至る所に修行の跡が残り昔は霊場だった島。そのイメージを重ねると「雄島より暮るる」は納得の表現だ。芭蕉はここであこがれの松島の月を眺めた。


遠き娘へ切手貼りたす秋風鈴   石巻市開北/ゆき

【評】季語秋風鈴が効果的。切手を貼り足すという内容の作品がたくさんあったがこの句が出色だった。


菰巻をキリリと縛り背筋伸ぶ   石巻市丸井戸/水上孝子

秋惜しむ生々流転の命かな   東松島市赤井/志田正次

磴下りるあばれ神輿に秋時雨   石巻市桃生町/西條弘子

青空のかけらのごとく秋茜   石巻市流留/大槻洋子

秋風や山に色付け里に降り   石巻市門脇/佐々木一夫

頂の風車照らして秋夕焼   石巻市元倉/小山英智

分校は山の麓や黄葉坂   石巻市小船越/芳賀正利

着替へして鏡に写る秋思かな   石巻市中里/川下光子

大根引く今日も大きな空の下   松島町磯崎/佐々木清司

サツマイモ笑顔そのまま掘り起こす   石巻市桃生町/佐藤俊幸

水澄むや母は益々穏やかに   石巻市新館/高橋豊

核のなき地球であれと月清し   石巻市広渕/鹿野勝幸

山小屋の焼酎旨し銀明水   多賀城市八幡/佐藤久嘉

秋うらら赤子は空へ手をのばし   石巻市流留/和泉すみ子

地下を出て秋の夕焼けを浴びにけり   東松島市あおい/下山慶子

栗飯のくだけたる栗の断面   石巻市恵み野/森吉子

秋の空釣竿振りて腕比べ   石巻市湊/斎田流雲

秋雲に乗りて消えゆく郷の浜   石巻市駅前北通り/津田調作

つくづくと出会いの不思議星月夜   東松島市矢本/菅原京子

病床に一人たたずみ鰯雲   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

敷石を渡る参道松落葉   石巻市のぞみ野/阿部佐代子

捨案山子行き交ふ車にらみをり   東松島市あおい/大江和子