俳句(11/24掲載)

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【石母田星人 選】


アルペジオ爪弾く先にオリオン座   東松島市赤井/志田正次

【評】
和音を散らしてギターを奏でる。一音一音に共鳴してまたたくのは冬の星座オリオンの星々だ。


秋ゆふべポニーテールの揺れにけり   東松島市矢本/菅原京子

【評】
話しながら通り過ぎる生徒。暗くてもう顔ははっきりしない。ただ影と化した髪の動きは分かる。髪の揺れだけに絞ったことで独特の雰囲気を生んだ。


輝ける風にゆだぬる芒の穂   石巻市駅前北通り/小野正雄

【評】
単なる芒原の描写ではなく、芒を擬人化した作りだ。この芒にとって風は輝ける存在なのだろう。己が身を委ねたくなるのも分かる。しかし風は空気の移動にすぎない。本当に輝いているのは自分なのだ。


時雨忌やゆつくり老いる島の松   松島町磯崎/佐々木清司

晩秋の大河の底に沈む錨   石巻市小船越/芳賀正利

壺の碑の刻の連なる神無月   石巻市丸井戸/水上孝子

天高く欅は樹齢八百年   石巻市渡波/阿部太子

夕しぐれ巨木を降ろすロシア船   石巻市中里/佐藤いさを

吊るされて鮟鱇の目にひと雫   多賀城市八幡/佐藤久嘉

慰霊碑の遥かなる上鳥渡る   石巻市新館/高橋豊

海を見に夫の遺品の冬帽子   石巻市蛇田/石の森市朗

新しき眼鏡にかへて文化の日   石巻市広渕/鹿野勝幸

初舞台果てし五人へ秋夕焼   石巻市流留/大槻洋子

冬波を目に噛みしめてにぎり飯   石巻市門脇/佐々木一夫

それぞれの子に持たせやる栗の飯   石巻市桃生町/西條弘子

缶見れば蹴りたくなるも日向ぼこ   石巻市桃生町/佐藤俊幸

山霧の広がるまちにくらしおり   石巻市流留/和泉すみ子

刈田行く気動車二両睦まじく   石巻市駅前北通り/工藤久之

祖母の部屋手摺り取り付け吊し柿   石巻市元倉/小山英智

寝そべって押しよせてきし星月夜   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

おしゃべりなカラスに残す柿一つ   石巻市湊/斎田流雲

仏壇のりんごひとつの香る部屋   石巻市渡波町/小林照子

遠い日の母の摺りたるとろろ汁   東松島市あおい/大江和子

虫の声聞かば幼なの夢想ふ   石巻市駅前北通り/津田調作

思い出は課外授業のイナゴ捕り   石巻市向陽町/成田恵津美