コラム: バイトと合羽(かっぱ)

 「急に家庭教師のバイトが入ってしまったから会うのは明日にしよう」。学生時代、こう言って約束を延ばしたことが度々あります。

 「バイト」はご存知「アルバイト」。「仕事や労働」を意味するドイツ語の「 Arbeit 」からきています。戦前に学生の間で使われはじめた隠語。本業である学業の副業として家庭教師などをすることをアルバイトと呼んでいたことから広まったらしいです。

 英語では a part-time job 。「パートタイム」は現代用語の一部になっています。また、昨今では「フリーター( freeter )」という言葉も生まれました。多様化する社会の表れかも知れません。

 時代をさかのぼり、室町時代にはポルトガルとの交流によって多くの言葉が日本語として定着しました。「雨が降るからカッパを持っていきなさい」。子どもの頃に祖母に言われました。「カッパ(合羽)」はもう死語に近いですが、元々のポルトガル語 capa は雨衣だけでなく本のカバーやCDケース、ソファに掛ける布など中身を保護するための覆いを意味しているようです。雨模様の日、今の時代は英語の「レインコート( raincoat )」ですかね。

 漢字(中国語)に加えて各国の言葉を貪欲に吸収してきた日本語...習得が世界で最も難しいとされる言語の一つであることを私たちは自覚し誇りを持っていいでしょう。同時に日本語のみならず言葉を大切にしていかねばならないと思うのです。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)