俳句(12/8掲載)

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【石母田星人 選】


朝日浴びひと色増すや冬紅葉   石巻市丸井戸/水上孝子

【評】寺社の樹木だろうか。時雨や霜などで周囲が枯れを深める中、色を極めてゆく冬紅葉。闇を脱いで光をまとう様子を「ひと色増す」とうまく捉えた。


振り向けば羚羊と目のあふ枯野   石巻市流留/大槻洋子

【評】視線を感じて振り返るとじっとこちらを見るカモシカ。好奇心旺盛でなかなか目をそらさない。


くつきりと月と金星冬に入る   石巻市広渕/鹿野勝幸

【評】今月の上旬頃まで、夕方の南西の空に、月と金星が接近して見えている。細月と宵の明星の共演は例えようもなく美しい。冷えた大気は澄み渡り、寄り添う光は強く、まさに「くつきりと」感じられる。


釉薬の澱かき混ぜる小六月   石巻市新館/高橋豊

昼ともす硯工房虎落笛   石巻市中里/佐藤いさを

黄落やビルに小さきクリニック   松島町磯崎/佐々木清司

漱石忌則天去私を考察す   東松島市赤井/志田正次

逍遥のズボンの裾の草虱   石巻市桃生町/西條弘子

待ったなし力士の火花竜の玉   石巻市桃生町/佐藤俊幸

秋深し海を見つむる供養塔   石巻市元倉/小山英智

教室の暖房検査冬支度   石巻市小船越/芳賀正利

通夜つづく藍のふろしき桐一葉   石巻市開北/ゆき

雨降れば雨に頷き猫じやらし   石巻市蛇田/石の森市朗

秋草に午後の翳りや始発駅   石巻市中里/川下光子

初雪や青菜の畑にうまみしむ   東松島市あおい/大江和子

舞い落ちる風花のなか空見上ぐ   石巻市流留/和泉すみ子

四葉摘む指の節くれ小春凪   石巻市小船越/堀込光子

朝練の毬栗頭露ひかり   石巻市湊/斎田流雲

鳥インフルこぼるる涙秋白雲   石巻市渡波町/小林照子

五円玉十円玉してかいつぶり   多賀城市八幡/佐藤久嘉

栗ようかんつきぬ話題とつきぬ笑み   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

寺内の野立の和菓子松落葉   石巻市のぞみ野/阿部佐代子

行く秋に「さよなら」「またね」「会えるかな」   石巻市向陽町/成田恵津美

圧力の鍋で秋刀魚の骨やさし   石巻市水押/阿部磨

秋深し花蜜さがすしじみ蝶   東松島市矢本/田舎里美