俳句(12/22掲載)

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【石母田星人 選】


子どもらは銀杏落葉へまつしぐら   石巻市広渕/鹿野勝幸

【評】止めどなく舞う銀杏落葉。その景を目にした途端子どもたちは駆け出した。うずたかく積もる落葉に周囲は明るい。子どもたちはもう埋れてしまいそうだ。


もみぢもみぢ金色堂へ行く途中   石巻市桃生町/西條弘子

【評】岩手県平泉の中尊寺にある金色堂へ。途中の空間はどこを向いても紅葉真っ盛り。皆金色の世界へいざなうように続いている。そんな紅葉の姿を優しい仮名の連続で表し、道案内の労に感謝している作者。


歪なる馬穴の水に小雪降る   石巻市小船越/芳賀正利

【評】いびつなバケツに入れられた水は、いびつな形になる。そんな水にも分け隔てなく雪は降りつぐ。


散りもみぢ空気も紅く染めあげて   石巻市湊/斎田流雲

冬枯れてこころを急かす夕陽かな   石巻市駅前北通り/津田調作

湯気の立つ皿の向うに霜の声   石巻市丸井戸/水上孝子

崩落の傷あかあかと山眠る   石巻市新館/高橋豊

木枯らしや人無き里を呼び歩き   石巻市門脇/佐々木一夫

煮魚の甘い香りや冬銀河   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

ひかりつつ波のゆらげる冬至晴   石巻市中里/佐藤いさを

わしわしと背筋ゆらし寒支度   石巻市開北/ゆき

年の暮車へひらり宅配便   東松島市あおい/大江和子

小春日や久に甘なふ妻も老ゆ   石巻市駅前北通り/小野正雄

白亜紀の崖に海鵜の黒づくめ   多賀城市八幡/佐藤久嘉

蔦紅葉終ぞ人影なき空家   石巻市中里/川下光子

湯上りや足袋ソックスの心地よさ   東松島市赤井/志田正次

濃いコーヒー位牌の父と栗の菓子   石巻市渡波町/小林照子

牡蠣を食ふ万石浦の香して   石巻市流留/和泉すみ子

晩秋の牧山散策土産にし   石巻市向陽町/成田恵津美

寒鴉足音響くトタン屋根   石巻市元倉/小山英智

小春日や天に突きさす玉ねぎ苗   石巻市桃生町/佐藤俊幸

ウオーキング遠回りする小春かな   東松島市あおい/下山慶子

秋寒し鍬を持つ手に震え来る   東松島市矢本/奥田和衛

老木も腹巻をして冬仕度   石巻市渡波/阿部太子

放牧を終えて牛たち新学期   東松島市矢本/田舎里美