最近「闇バイト」が話題になっています。前々回も述べた通り、ドイツ語で「仕事や労働」を意味する Arbeit (アルバイト)に由来します。
学生時代、実にさまざまな「バイト」をしました。家からは十分な仕送りがあったのですが、「社会探訪」も兼ねて行ったのです。仕事は大学の学生課を通じて来たものでした。ビルの掃除から家庭教師までいろいろやりました。「社会勉強」としてはビルの掃除です。早朝、ビルを使う仕事が始まる前、モップで階段などをきれいに拭くのです。掃除のおばさんたちに気合をかけられながら。
忘れられないのは「通訳」でした。田舎から出て行って右も左も分からないのに、行ったこともない京都へイギリスBBC放送の特派員を案内するという「離れ技」をしたのです。途中、新幹線の車両の中で、その特派員からネクタイの締め方を教わりました。ネクタイをする時、今でもこのことを思い出します。よくそんなことができたものです。
この Arbeit はかつてポーランドのアウシュビッツ強制収容所(第1収容所)のアーチの門とも関係していたことがあります。ナチス・ドイツが、「働けば自由になる」というユダヤ人を収容する強制収容所のスローガンおよび強制収容所のアーチの門の文字に用いたのです。
数年前、私はこの門の前にたたずみました。悲しみと、何とも言えない感情に襲われたのを覚えています。
大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)