俳句(1/12掲載)

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【石母田星人 選】


初日記海原白く船出かな   石巻市開北/ゆき

【評】新年を迎えて初めてつける日記。まっさらなページを前にすると心が改まる。中七以下「海原白く船出かな」は、未来への清新な一歩を感じさせる。


藤原の落人の浜牡蠣を剥く   石巻市蛇田/石の森市朗

【評】大須浜のことだろうか。上五中七の「藤原の落人の浜」だけで十分にイメージが膨らみ、浜の景が見えてくる。浮かび上がった視覚に、牡蠣剥き作業の聴覚が重なることで一層の奥行きが生じている。


冬枯れやじたばたせずに待つ心   石巻市中里/川下光子

【評】冬枯れの木の多くは生きている。春になると勢いを取り戻す。焦らずに待てと教えてくれる木々。


気嵐を巻き込みながらいさり舟   石巻市門脇/佐々木一夫

船大工生きる証しのあかぎれか   石巻市中里/佐藤いさを

初御空戦なき世をいとほしむ   石巻市広渕/鹿野勝幸

震災の月命日の寒さかな   石巻市元倉/小山英智

騎馬像の政宗公も息白し   石巻市小船越/芳賀正利

壺の碑を囲む風音冬に入る   石巻市桃生町/西條弘子

落ち葉道サクサクサクと三拍子   石巻市湊/斎田流雲

お社へ傾斜あかるき冬木立   石巻市流留/大槻洋子

寒造り醪に乗せる杜氏謡   石巻市丸井戸/水上孝子

小春日や発芽させては命継ぐ   石巻市桃生町/佐藤俊幸

水呑みの獣の道に冬木の芽   多賀城市八幡/佐藤久嘉

前向きにとらえる癖や碇星   東松島市矢本/菅原京子

雪虫や蔵王遥かに浮かびおり   石巻市小船越/堀込光子

十二月返事の来ない手紙書く   松島町磯崎/佐々木清司

ふうふうと口をすぼめて冬至粥   東松島市赤井/志田正次

父母におにぎり二つ今年米   石巻市新館/高橋豊

遠目にも南天の実の際立ちて   石巻市向陽町/成田恵津美

厚き雲流れる日々の炬燵かな   石巻市駅前北通り/津田調作

青春の彼への思い枇杷の花   石巻市のぞみ野/阿部佐代子

新米の香り漂う晩支度   石巻市桃生町/西條和江

日捲りは年を越えれば若返る   石巻市水押/阿部磨

冬の月ひかり零るる地にも降る   東松島市矢本/田舎里美