コラム: 蛇の話

 爬虫(はちゅう)類は苦手です。皆さんはどうでしょうか。

 洋画「天地創造」(1966年)で蛇が出てくるシーンがあります。人間をそそのかして「禁断の木の実」を食べさせる場面です。神が造られた野の生き物のうちで、蛇が最も狡猾でした。そこで、主なる神は蛇に言われたのです。「おまえは、この事(人間をそそのかした行為)をしたので、全ての家畜、野の全ての獣のうち、最も呪われる。おまえは腹で、這い歩き、一生ちりを食べるであろう」

 普通、私たちは蛇のことを英語で snake と記憶していますが「蛇」は serpent と表記されています。イヴを巧みにそそのかす悪知恵ある存在として登場。恐怖の蛇が嫌悪の感情あたりと結ばれた場合には、しばしば悪知恵・狡知(こうち)といった色付けをされることになります。

 一方、我が国では蛇は縁起の良いものとして重宝がられているようです。

 卑近(ひきん)な例として「蛇田」という地名があります。最初は何という嫌な地名だと思っていましたが、とんでもない間違いでした。ヘビは脱皮を繰り返すため「復活と再生」を連想させ、強い生命力がある縁起の良い動物と考えられていたのですね。加えて餌を食べなくても生きながらえるので「神の使い」としても崇(あが)められます。

 洋の東西、いろいろあるんですね。どちらが良いとかではなく、それぞれの歴史を見つめることが大事だと思います。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)