俳句(2/9掲載)

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【石母田星人 選】


山眠る星のすだれに身を委ね   石巻市湊/斎田流雲

【評】「山眠る」は静まり返った冬山を擬人化した季語。多くは昼の景で用いられるがここは夜の様子。季語の本意とはやや外れるが、夜空にもたれ本格的に眠る山も面白い。「星のすだれ」の詩的表現に感服。


青年の眼の透き通る弓始   石巻市丸井戸/水上孝子

【評】新年の神社での神事か学校行事だろう。詠むべき多くの句材がある中、弓を絞る青年の顔に注目。彼の眼が透き通った瞬間、矢が放たれたに違いない。


この冬は星との会話成り立ちて   石巻市渡波/阿部太子

【評】西に宵の金星、天頂に木星と火星。この冬は惑星たちが勢ぞろい。存在感ある惑星は雄弁なのだ。


春よ来い鳶の高舞ふ被災の地   石巻市蛇田/石の森市朗

思ひきり手足を伸ばす霜の朝   石巻市桃生町/西條弘子

四股をふむ余生か冬芽よく尖る   石巻市開北/ゆき

目に沁むや青き川面の初景色   石巻市中里/川下光子

白鳥の列乱れずに行き帰り   石巻市広渕/鹿野勝幸

初日の出名もなき山に昇りけり   石巻市小船越/芳賀正利

初日の出今年も命貰い受け   石巻市門脇/佐々木一夫

春を待つ今年も同じ農日誌   松島町磯崎/佐々木清司

寒の入り気合い込めたる味噌仕込み   東松島市赤井/志田正次

冬深し男文字のはね強し   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

0乗が1なる不思議寒卵   石巻市小船越/堀込光子

ささくれていいと赦さる冬の海   多賀城市八幡/佐藤久嘉

仏前に一番さきに七日粥   石巻市新館/高橋豊

娘らと七草とんとん女正月   石巻市渡波町/小林照子

背のびして夫のかわりの年用意   石巻市流留/大槻洋子

桃太郎孫と添寝の炬燵かな   石巻市元倉/小山英智

湯婆やほんわりぬくい夜中二時   石巻市流留/和泉すみ子

雪積るみんな隠れてのっぺらぼう   石巻市駅前北通り/津田調作

葦の陰鴨の憩える汽水凪   東松島市矢本/田舎里美

土ゆすって発芽まだかと冬うらら   石巻市桃生町/佐藤俊幸

年新た歳に抗う気になりて   東松島市矢本/菅原京子

霜柱ザクザクザクと仁王立ち   石巻市桃生町/西條和江