コラム: スチール

 日本とアメリカ合衆国の間で問題となっているのに「スチール」があります。鉄鋼です。

 小さい頃、「鉄」は iron と覚えました。「アイロン」をかける母のそばで覚えたものです。そして高校になって「スチール」が出てきました。どう違うのでしょう。調べてみると、 iron は「炭素が含まれていない純粋な鉄」、 steel は「炭素が含まれ純粋な鉄よりも丈夫になったもの」。

   Strike while the iron is hot.
   「鉄は熱いうちに打て」「好機を逃すな」という諺(ことわざ)はよく知られています。

 また、1946年3月のイギリスのウィンストン・チャーチルのスピーチの中の言葉、" an iron curtain has descended across the continent."「大陸に鉄のカーテンが下ろされた」は有名です。正に東西冷戦を表す言葉でしょう。

 そして、 steel に似た発音の語に still がありますね。語学屋を自認する私が出合ったのが次の諺。

   Still waters runs deep.
  「静かな流れは深い」。考えの深い人はべらべらしゃべらない。「能あるタカは爪を隠す」に近いかもしれません。

 美術の世界では still life は「静物」「静物画」を表すことも知っておきましょう。大声で喋る人は苦手ですが、声の調子を整えてほどほどに話す人に魅力を感じます。

 「鉄」は粘り強さを感じさせる言葉です。USスチールと日本製鉄をめぐっての駆け引きはしばらく続くでしょう。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)