2024年度の「石巻かほく」短歌の最優秀賞に東松島市矢本の川崎淑子さん(77)、優秀賞は石巻市流留の大槻洋子さん(77)、同市南中里の中山くに子さんがそれぞれ決まった。川崎さんは初めて最優秀賞に選ばれた。選者の斉藤梢さんが選出した。
<選者・斉藤氏の評>
最優秀賞は、川崎淑子さんの5月19日掲載の作品<満開の下の沼には糸とんぼ小さき命の強さを見せて>。
満開の桜に向けられた視線が、その花の下の沼に移る。この時見つけた小さな「糸とんぼ」の姿に、命の強さを感じる作者。一つの気づきによって生まれた感慨に的確な言葉を与えて詠んでいる。春の日の一期一会を残す歌でもあり「命の強さ」と表現したところが、優れている。<新年を寿(ことほ)ぐ時の短さや地震の報にあの日が重なる>の一首も、心に残る。
優秀賞は、大槻洋子さんの9月22日の<正しいと信じたものに迷うとき朝月淡く心許(もと)なし>。迷いを抱えつつ月に話しかける、この静謐(せいひつ)な時間。月は作者の心を映すかのように淡い。
下の句のように月の表情を詠むことで、さらに明らかになる心の揺れ。自身の迷いと向き合っていることを、真に伝える心象詠。
同じく優秀賞は、中山くに子さんの8月25日の<終日をオリンピックに魅せられて世界の波に揺れいる老いは>。昨年のオリンピック夏季大会を詠み残す一首。「世界の波に揺れいる」で、感動を表現しているところが巧みだ。各国の選手の気迫を感じて、作者もまた健やかになったことだろう。
<受賞者の声>
【最優秀賞・川崎淑子さん】
うれしいです。斉藤先生には拙い作品を読んでくださっているだけでも感謝します。
7年前に母が亡くなり、心にぽっかりと穴が空きました。当時一緒にパークゴルフをしていた知人が短歌を詠んでいたため、勧められて短歌に触れるようになりました。約1年間、短歌の通信教育を利用していましたが、知人に背中を押されて2019年に石巻かほくへの投稿を始めました。
日常や自然、時事問題など、生活している上で目に入った物事を「どのようにしたら短歌にできるかな」と考えて作品にします。無理はせず、頭に浮かんだら作るようにしています。
日ごろ花を育てており、生活の中で四季を感じていました。短歌の世界に入り、感じていたことを言葉で表現できるようになって喜びを感じています。
自分の頭が動き、興味が尽きない限り、今後も短歌を作っていきたいと思います。