2024年度の「石巻かほく」俳句の最優秀賞が石巻市丸井戸の水上孝子さん(79)、優秀賞は石巻市中里の佐藤いさをさん(85)、石巻市蛇田の石の森市朗さんに決まった。水上さんは初の最優秀賞受賞。俳句欄選者の石母田星人氏(仙台市)が選考した。
<選者・石母田氏の評>
本年度も多くの皆さんの句で活気のある俳壇になった。感謝したい。今回も年間を通して投句していただいた人の中から選んだ。
最優秀賞は水上孝子さん。水上さんの作品はどれも印象鮮やかな写生句で存在感があり、毎回の紙面に落ち着きを与えてくれている。本年度は特に、対象の質感や量感を巧みに捉えた作品が光った。例えば<霾(つちふる)や慰霊碑の名の連なりに>では、黄砂の背景にある時空間の広がりに注目し、うまく詩性につなげた。風の優しさを仮名で表現した<ふうりんがかぜをはこびしおほひろま>では、風鈴が鳴ってから涼を感じるまでの時間に焦点を当てた。また<青年の眼の透き通る弓始><朝日浴びひと色増すや冬紅葉>などでは、独特な写生の眼力に磨きがかかった。
優秀賞は佐藤いさをさん。佐藤さんの句に共通するのは着眼点のよろしさ。誰も詠まない方向から作品を構成する力量に感服。<雄島より暮るる松島翁の忌><暁光のあふれてゐたり竹落葉>などにひかれた。
同じく優秀賞は石の森市朗さん。石の森さんは、眼前の景を大きな空間として感受することが巧みで、奥行きある作風が魅力。<春が来る野山に太鼓打ち鳴らし><夏雲へ舳先向けたる寄港船>などに注目した。
<受賞者の声>
【最優秀賞・水上孝子さん】
先生から合格点を頂いたような気分で、とてもうれしく思います。
もともと俳句に興味を持っていて、約8年前、通信教育で1年間習いました。2020年、もう一歩踏み出した俳句活動をしたいと思い、石巻かほくに投句するようになりました。初めての投句が評に選ばれ、とてもうれしかったのを覚えています。
俳句を作る上で大切にしているのは、四季の移り変わりです。自宅の庭にミツバツツジなどの植物を植えており、季節ごとに咲く花々が変わります。花を見ていると、生きる活力が湧いてきます。
1カ月に6句作ることを自分に課しています。今の生活を少しでも豊かにしたいと思い、取り組んでいます。
私にとって俳句はライフワークで、俳句欄は顔が見えない句会です。皆さんがどんな人なのか、想像しながら見ています。今後も投句を続けていきたいです。