俳句(4/20掲載)

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【石母田 星人 選】


燕通し開ければ燕飛び込めり   石巻市桃生町/西條弘子

【評】燕専用の入り口があるのは納屋とかガレージなのだろう。開けてくれるのを待っていたかのように飛び込んできた。その勢いが何ともうれしい。夏場の巣立ちの時まで、家族の一員になって子育てに励む。


片栗や晴れには晴れのはしゃぎよう   多賀城市八幡/佐藤久嘉

【評】片栗は雪解を待って真っ先に花を咲かせる。群生に出合ったのだろう。早春の陽光を独り占めしている。下五は花の様子でもあり作者の思いでもある。


春風のほのと川村孫兵衛碑   石巻市中里/佐藤いさを

【評】「ほのと」が多くを語ってくれる。「春風の優しさもあなたがこしらえた」と語りかけている。


春暁や夢はいつでも多面体   松島町磯崎/佐々木清司

海までの右往左往やぼたん雪   石巻市流留/大槻洋子

霾ぐもり木魚で朝の始まれり   石巻市広渕/鹿野勝幸

ビル街の空に隙間や鯉幟   石巻市小船越/芳賀正利

定川の水面に映える春の雲   東松島市矢本/奥田和衛

畦を焼く昔のままの匂ひかな   石巻市駅前北通り/小野正雄

読みかけに指栞する目借時   石巻市新館/高橋豊

明日葉の生き抜く強さ腹に入れ   石巻市桃生町/佐藤俊幸

コーラスの開演時間つくしんぼ   石巻市蛇田/石の森市朗

蓬餅茶壺茶壺の童歌   石巻市中里/川下光子

北窓を開けば拡き部屋となり   石巻市丸井戸/水上孝子

助走して水面全力鳥雲に   石巻市元倉/小山英智

桜咲き溢れる未来身にまとい   石巻市渡波/阿部太子

開花待つ桜惑わす寒暖差   東松島市赤井/志田正次

犯人のごとき出で立ち杉花粉   石巻市小船越/堀込光子

剪定す小枝くはへて鴉跳び   石巻市門脇/佐々木一夫

ひざ小僧照る正面や卒園す   石巻市開北/ゆき

ただいまと犬にひと声一年生   東松島市あおい/大江和子

入学子泣く子もおらず静かなり   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

そこだけがひかりのじゅうたん犬ふぐり   石巻市向陽町/成田恵津美

季の来てアサリの貝の音を聞く   石巻市駅前北通り/津田調作

春の海飢え救いたるしうり貝   石巻市二子/小松道男