俳句(4/6掲載)

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【石母田 星人 選】


畑打を促してゐる鳥のこゑ   石巻市新館/高橋豊

【評】大雪や強風で延び延びになっていた畑の掘り返し。くわを握り畑に出たら応援するように鳥の声。


入試日の車窓にほそき首こくり   石巻市開北/ゆき

【評】入試当日の朝の景。「ほそき首こくり」で、車窓を挟んだ受験生と家族らの心情を繊細に表した。「ほそき首」で家族の心配や不安な様子を語り、続く「こくり」で受験生の内に秘めたる闘志を描いた。


ひと言も歌に書けない春の雪   石巻市駅前北通り/津田調作

【評】本来晴れやかなイメージの季語春の雪。震災後、印象が変わってこの季語で詠めなくなったという人がいる。震災の傷は季語の世界にも及んでいる。


すれ違ふこゑやはらぎてお中日   石巻市丸井戸/水上孝子

利休忌や媼こごむる躙り口   石巻市中里/佐藤いさを

冤罪の流人もおるや鳥帰る   石巻市流留/大槻洋子

うぶすなの山河は清しみそさざい   石巻市小船越/芳賀正利

とくと見よ誇らしく言う桜かな   石巻市渡波町/小林照子

春うらら浮桟橋がひとり鳴る   女川町旭が丘/阿部重夫

強風のあとの満月春浅し   石巻市広渕/鹿野勝幸

頬紅のブラシくるくる春愁ひ   石巻市中里/川下光子

春風に背中おされてひとりだち   石巻市流留/和泉すみ子

つくしんぼまた一機来る訓練機   石巻市桃生町/西條弘子

海に来て誰を偲ぶや春日傘   石巻市蛇田/石の森市朗

生かされし命紡ぎてゆすらうめ   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

如月の過ぎてもっぱら泪かな   東松島市矢本/菅原京子

物種の準備万端老農夫   石巻市小船越/堀込光子

春旱シャワーの滴に畑はしゃぐ   東松島市矢本/田舎里美

畑から少し離れて昼蛙   石巻市桃生町/佐藤俊幸

赴任明け車窓を包む春茜   石巻市湊/斎田流雲

長閑なりラクリモーサの祈りの日   東松島市赤井/志田正次

街中に春の息吹や児らの声   石巻市渡波/阿部太子

裸木やここから切れと枝を張り   石巻市門脇/佐々木一夫

ノーマルに入れ替え終えて春の風   石巻市元倉/小山英智

落椿古い祠の石段に   石巻市真野/高橋としみ